[ゼロックス杯]川崎３-２G大阪／２月20日(土)／埼玉スタジアム2002
 
　川崎がG大阪を３-２で下した２月20日のる富士ゼロックス・スーパーカップで、期待の新助っ人がデビューを果たした。
 
　今オフに名古屋から川崎へ加入した、ブラジル人MFジョアン・シミッチ。４-３-３のシステムにおいて、ポルトガルへ移籍した不動のアンカー、守田英正に代わる存在として注目される“ピボーテ”である。
 
　フィッカデンティ監督の下で３位と躍進した昨季の名古屋では、出場機会が限られたが、実力は本物である。長短のパスを操り、インテンシティの高いプレーでボールを奪い、空中戦も得意とする。G大阪戦でも的確にパスを散らしながら、CKでタイミングよくニアサイドに走り込み、惜しいシュートを放っている。
 
　振り返れば2019年の開幕前、沖縄キャンプ中に名古屋への加入が発表されたJ・シミッチは、当時、指揮を執っていた風間八宏監督から高く評価されていた。
 
　かつての師は「映像を観た時点で技術を教える必要はないと思っていました」と称讃。「ヨーロッパでやっていた（ポルトガルやイタリア）ので、スピードにも慣れている。サイドに展開してしまうことが多かったですが、もっとできるだろうと話したら、どんどん縦パスも入れてくれるようになりました」と目を細めた。
 
　短時間で要望に応えられるテクニックの高さ、戦術眼を備え、風間監督が推したのは“スピード”でもあった。それは足の速さを表わすわけではなく、ボールを正確に止めて、蹴れるからこそ、プレーの一つひとつがスピーディで、判断力も速いということである。
 
 

　G大阪戦ではまずまずの新天地デビューも、鬼木達監督も能力の高さが分かっているからこそ、さらなる要望を出す。
 
「どれだけボールに多く触ってコントロールできるか。そこは彼のひとつの特徴でもあると思うので、もっとボールに絡んで欲しいと思います。ただ練習が始まった当初から比べるとどんどん良くなっている。細かいところですが、もう一回ボールを受けられるシーンや、少し寄りすぎてしまったところはあります。そこは修正していきたい。真面目な選手なので、いろんな要求に応えて、一つずつクリアしてほしいと思います」
 
　リクエストに応え、さらなる真価を発揮する時が楽しみである。昨季の“影のMVP”とされた守田とはまた異なった魅力を今後、提示してくれるに違いない。
 
取材・文●本田健介（サッカーダイジェスト編集部）