【三浦泰年の情熱地泰】僕はどんな選手だったのか? 2020年の最後にもう一度自分のことを振り返ってみる…

カテゴリ:連載・コラム

サッカーダイジェストWeb編集部

2020年12月31日

「そろそろヤスのような選手が必要になったんじゃないのか?」と言ったレオン氏の言葉

清水ではキャプテンを務めた三浦泰年氏。現役時代は気持ちを前面に出したプレーを見せた。(C) Getty Images

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 今年最後に書くコラムになった。2020年は世界中にとって大変な年だった。
 
 そんな年の暮れに「僕はどんなプレーヤーだったのであろう?」
 
 監督という仕事をプロとして初めた時に「僕みたいな選手は必要ない」と思いながら、選手を成長させて勝たせようと思っていた……。
 
 育成の子どもを教えるきっかけになったヤスサッカースクールからクラブチームFCトッカーノを設立する時に「三浦兄弟」を育てるのではなく、もう日本で「ジダン」を育てる時代なんだと思い立ち上げた。
 
 そして現役選手引退後の指導はデモンストレーションを見せて、一緒にプレーして教えるのではなく笛と言葉で教えようと思ったものだ。
 
 実際にプレーを見せれば子どもは皆、「おー凄い!」となる……。見せないで「おー、凄い!」と思わせる指導者を目指そうと思った。簡単なことではない。
 
 そんな僕は、どんな選手だったのであろうか?
 
 そんなことを考えた理由は、今年多くの人と話をしたなかで、僕のプレーを見たことがない、知らないという人から、そう聞かれることが何度かあったからだ。
 
 僕は、子どもの頃から異常に負けず嫌いだった記憶がある。
 
 試合で負けたら悔しくてたまらなく、抜かれそうになれば飛び蹴りをしてでも奪い返したく、ドリブルで取られるなんて考えられなかった。絶対に奪われないようにドリブルしたし、良いタイミングでパスを出した。一か八かでなく確率の高いプレーを選択していたと思う。
 
 自分の存在はチームで絶対に必要なんだと思っていたし、チームのひとりとしてチームのために闘い続けたという自負もある。
 
 しかし、その自分のような選手は「必要ない」と思ったのはなぜだろう? きっと基準を高くプロとして設定していたのであろう。
 
 自分のやったことは誰でも出来る。
 
 気持ちが負けず嫌い、そんなのは当たり前で、その上を行く、エレガントさ、華麗さ、美しさを求めていたのだと思う。
 
 そこには個人の必死さは表面に出さず、内に秘めて誰もできないエレガントなサッカーを目指す。そんな事を考えていたのであろう(笑)。
 
 だから三浦泰年のような激しさを前面に出してやるプレーヤーは、監督がベンチでやるから大丈夫だと思っていたのであろう。
 
 ただ、そうでありながら厳しさ必死さ、諦めない気持ち、集中力といったことは、練習の中ですごく求めていた。矛盾しているようであるが、当たり前のグリット力より目指すサッカーへの魅力を実現するための美しさを選手が知ることに重点を置いていた。
 
 それが監督を始めた当時のことである。2018年、鹿児島ユナイテッドFCを昇格させる事ができ、その後にブラジルへ行き、恩師である元監督のエメルソン・レオン氏の所へ出向いた。
 
 清水エスパルス、ヴェルディ川崎時代に選手として信用してもらい、エスパルスではキャプテンに任命され、ヴェルディ川崎では中心として天皇杯で優勝。ヴィッセル神戸では監督を呼ぶ立場としてチームへ招聘。その後、コーチとしての関係も経験した。
 
 そのレオンの家で、こんなことを言われた。
「そろそろヤスも監督として自分のような選手が必要だと思うようになったのではないか?」
 
 以前、ギラヴァンツ北九州を指揮した1年後にレオンに会った時は「もうベンチでドキドキしなくなったか?」と言われたこともあった。
 
 経験豊富なレオン氏からの良きアドバイスではあるが、「そろそろヤスのような選手が必要じゃないのか?」と言われた時、実際に鹿児島が昇格を意識できる数字(時期)になってきた時の選手の状態、過剰に緊張し、プレッシャーと闘い、押し潰されそうになっているのを目の当たりにして、自分がボールを蹴れない難しさを感じたのを思い出した。
 
 その時にはレオン氏の言う、自分のような選手が必要とは気づかなかったが、選手のメンタルの弱さ、経験のなさ、どう乗り越えられるか、クラブと一所懸命に打開策を練り、議論して、結果、昇格に辿り着けたが、大変もがき苦しんだシーズンであった。
 
 僕が僕のことを書く。それも現役時代のことを……。僕の選手の顔を知らない人は10年前より、より増えただろう。恥ずかしいが少し説明してみよう。
 
 僕は根性だけでプロになり、日本代表までなれた人間だ。気持ち、メンタルの強い選手であったと思う。
 
 なぜ、そうなれたか。それは間違いなく技術への自信。幼児期からの技術の会得だと思う。「止めて蹴る」をプロレベルになっても強調する指導者は当たり前のことを言っているだけである。「止めて蹴る」を、どのスピードでできるかが大事なのである。
 
 僕はこの「止めて蹴る」の技術は自分のスピードでしか出来ないが、子どもの頃に身につけたメンタルでも負けない理由がこの技術であった。
 
 身体能力の低い選手であったため、自分の弱点をどう克服してプレーするかを、子どもの頃から引退するまでずっと考えてプレーした。
 
 弱さを知る者が強い。ヤスは自分の弱点を知っているから強いと言われて自信をつけていった。その弱点を強みに変えるにはサッカーのトレーニングを誰よりもやる!
 
 練習量。そして誰にも負けない体力、持久力を付ける。これが僕を支えた2つなのだと思う。プロでプレーし続けられたのも練習と持久力だ。
 
 38歳で現役を引退するまで、クーパー(12分間走)は3,600m以上走れた。正確には36歳にアビスパ 福岡のトレーニングで走ったクーパーが3,650mであった。坂道アップダウンがあるロードレースでは、若い18歳の選手にも一度も負けなかった。
 
 練習が嫌いになったら引退する時、練習が出来なくなったら辞める時と思っていた。ベテランになると別メニュー調整で試合に出る。そうなった時は退かなければと思ってやった。
 
 それが僕を支えてくれた誇れるものであり、自信に繋がる原点である。
 

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