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バルサが見せた、まるでモウリーニョのチームのような「集中的な戦い」【小宮良之の日本サッカー兵法書】

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2020年12月16日

開始20分間で勝負を決めに来ていた

フェレンツバロシュ戦でデンベレ(左)のクロスから2点目を奪ったブライトワイト(右)。(C) Getty Images

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 チャンピオンズ・リーグのグループステージ第5節、バルセロナは敵地でハンガリーのフェレンツバロシュを0-3と“粉砕”している。

 ロナウド・クーマン監督は、リオネル・メッシなど主力を数人温存しながら、開始20分間で勝負を決めに来ていた。前線から激しくプレスを行ない、高い位置でボールを動かし、果敢にゴールへ迫った。相手が前に出られないところで、サイドから崩し切って、13分、19分と立て続けにクロスからゴールを放り込んでいる。

 26分にもPKを奪い、これを沈めて0-3とし、試合の趨勢を決した。

 その後、クーマン・バルサはのらりくらりとした試合で、相手に攻められる時間もあったが、人を替えながら完勝している。3点差をつけたことで、相手の反撃する力を削いでいた。気力を萎えさせたのだ。

 こうした試合の入り方に全力を投入し、あえてエネルギーを使い、試合を制するのは作戦の一つだろう。90分、プレスをかけ続け、攻め続けることは不可能。勝機を探すのが指揮官の務めだが、ジョゼ・モウリーニョなどもこうした集中的な戦いを得意としている。

 勝利の法則の一つだ。
 
「敵の崩れ目を突き、立ち直ることができないように、確実に追い打ちをかけることが大切である。追い打ちをかけるとは、一気に強く打つことである。敵が立ち直れないように、打ちはなすものである。この打ちはなすということを、よくよく理解しなければならない。(相手を引き離せないと)ぐずぐずしがちになる。工夫すべきである」

 宮本武蔵の「五輪の書」では、そう戦い方の極意が出ている。

 相手を打ち付けたら、立てなくなるまでコテンパンにするべきだと説く。さもなければ、耐え凌ぎ切った相手が息を吹き返す。今度は、こっぴどい反撃を食らうことになるとの警告だ。

「戦っているうちに、敵の拍子が狂って崩れ目が出てくるものである。その時、油断すれば、敵はまた立ち直り、新しい体勢となって、どうにもゆかなくなるものである」

 試合には、必ず潮目がある。そこを自らが作り出すことで、優位に運べるか。あるいは相手の戦いを読んで、逆手に取れるか。その駆け引きが、サッカーでは肝になる。

 相手の勢いが火のようにすさまじかった場合、守るほうは無理をせず、ボールを蹴るしかない。後の先を取るように、相手の勢いが落ちた瞬間、背後を狙う。それまでは耐え凌げるだけのディフェンスのトレーニングが必要になる。それができることを、守備的とは言わない。集中的なリトリートは、駆け引きを制する一つの戦術だ。

 サッカーの世界では、攻守一体が求められる。常にそれは入れ替わることを忘れてはならない。ずっと能動的に攻め立てることができたら、それはサッカーの理想と言えるが……。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。
 
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