周囲の雑音を黙らせた離れ業
周知の通り、現地時間11月25日に元アルゼンチン代表FWのディエゴ・マラドーナが他界した。先月30日に還暦を迎えたばかりだった。
サッカー界に様々な伝説を残した英雄だけに、秘蔵エピソードは山のように存在する。急逝を受け、各国メディアでもマラドーナにゆかりのある人物が赤裸々に告白するなか、マラドーナを伝説へと昇華させた試合を振り返ったのが、テリー・フェンウィックだ。1986年のメキシコ・ワールドカップ準々決勝でアルゼンチンと対戦したイングランドのCBを務めていた名手である。
51分に本人の言う“神の手(左手)”でゴールを決めていたアルゼンチンの10番が、周囲の雑音を一瞬にして黙らせたのは、わずか4分後のことである。
自陣センターサークル付近でボールを受けたマラドーナは、軽やかなボールタッチでいとも簡単にマーカーを抜き去ると、そこから一気に加速。魔術師のようなドリブルで眼前に立ちはだかる相手CBをかわし、最後は懸命に手を伸ばた守護神ピーター・シルトンもいなして、左足でゴールに流し込んだのだ。
マラドーナ自身が生前に「神の手ゴールを超えるものだった」と振り返った伝説の“5人抜き”。この離れ業を目の前でやってのけられたのが、テリー・ブッチャーと共にCBでプレーしていたフェンウィックだった。
当時、イングランド代表の絶対的なレギュラーCBだったフェンウィックは、英スポーツ専門ラジオ局『talkSPORT』で、マラドーナを「疑う余地なく史上最高の選手だ」と称えつつ、「苦々しい思い出だ」と5人抜きゴールを振り返った。
サッカー界に様々な伝説を残した英雄だけに、秘蔵エピソードは山のように存在する。急逝を受け、各国メディアでもマラドーナにゆかりのある人物が赤裸々に告白するなか、マラドーナを伝説へと昇華させた試合を振り返ったのが、テリー・フェンウィックだ。1986年のメキシコ・ワールドカップ準々決勝でアルゼンチンと対戦したイングランドのCBを務めていた名手である。
51分に本人の言う“神の手(左手)”でゴールを決めていたアルゼンチンの10番が、周囲の雑音を一瞬にして黙らせたのは、わずか4分後のことである。
自陣センターサークル付近でボールを受けたマラドーナは、軽やかなボールタッチでいとも簡単にマーカーを抜き去ると、そこから一気に加速。魔術師のようなドリブルで眼前に立ちはだかる相手CBをかわし、最後は懸命に手を伸ばた守護神ピーター・シルトンもいなして、左足でゴールに流し込んだのだ。
マラドーナ自身が生前に「神の手ゴールを超えるものだった」と振り返った伝説の“5人抜き”。この離れ業を目の前でやってのけられたのが、テリー・ブッチャーと共にCBでプレーしていたフェンウィックだった。
当時、イングランド代表の絶対的なレギュラーCBだったフェンウィックは、英スポーツ専門ラジオ局『talkSPORT』で、マラドーナを「疑う余地なく史上最高の選手だ」と称えつつ、「苦々しい思い出だ」と5人抜きゴールを振り返った。
「11人対11人のはずだったが、アルゼンチンには世界最高の選手がいて、彼だけは別の次元だった。本当に信じられない奴で、周りに何人のディフェンダーがいようが関係がなかった。彼にひとたびボールが渡れば、全てを破壊した。それがまさにあの5人抜きだったんだ」
この対戦のなかで、「何とかして食い止めたくて、何度か危険なタックルもしてしまった」と振り返ったフェンウィックは、アルゼンチンのレジェンドとなった男への正直な想いを打ち明けている。
「彼の凄さは知っていた。だから何度かビビらせてやろうと、危険なタックルをしたよ。それでもそのたびに軽くウォームアップをしてから戻って、平然とプレーをしているんだ。私は『この男を止めるにはどうしたらいいのか』と悩まされた。
私は幾度となく立ち向かったが、ボールはもう左足に張り付いているように見えて、奪ってやろうとしても無理だった。彼のことを威嚇しようとしても番犬のように歯向かってくる。こっちがたじろいだぐらいさ。あれは男の自信というか、自分が誰よりも優れていることを理解していたからできることだったんだろう」
ラフプレーもいとわないタフガイたちを相手にしても、微塵もたじろがずに食い下がったマラドーナ。あの5人抜きの離れ業は、技術面もさることながら、彼の強靭なメンタリティーが生み出したものと言えるのかもしれない。
構成●サッカーダイジェストWeb編集部
この対戦のなかで、「何とかして食い止めたくて、何度か危険なタックルもしてしまった」と振り返ったフェンウィックは、アルゼンチンのレジェンドとなった男への正直な想いを打ち明けている。
「彼の凄さは知っていた。だから何度かビビらせてやろうと、危険なタックルをしたよ。それでもそのたびに軽くウォームアップをしてから戻って、平然とプレーをしているんだ。私は『この男を止めるにはどうしたらいいのか』と悩まされた。
私は幾度となく立ち向かったが、ボールはもう左足に張り付いているように見えて、奪ってやろうとしても無理だった。彼のことを威嚇しようとしても番犬のように歯向かってくる。こっちがたじろいだぐらいさ。あれは男の自信というか、自分が誰よりも優れていることを理解していたからできることだったんだろう」
ラフプレーもいとわないタフガイたちを相手にしても、微塵もたじろがずに食い下がったマラドーナ。あの5人抜きの離れ業は、技術面もさることながら、彼の強靭なメンタリティーが生み出したものと言えるのかもしれない。
構成●サッカーダイジェストWeb編集部