今季2度目の無失点勝利という理想的な船出に
[J1リーグ19節]神戸4-0札幌/9月26日(土)/ノエスタ
就任から初陣まで、神戸の三浦淳寛監督に与えられた準備期間はたった2日だった。それにもかかわらず、策士・ペドロヴィッチ監督率いる札幌に4−0で快勝した。怒涛のゴールラッシュもさることながら、今季2度目の無失点勝利という理想的な船出。だが、試合後のリモート会見で三浦監督は、神妙な面持ちでこう語った。
「我々のやりたいサッカーができたかどうかという点においては、満足していません」
ここには、三浦監督の自身の采配に対するどんな評価が隠されているのか。その真意を考えてみたい。
まず両チームのスタッツを比較すると、シュート数では札幌が3本多く、ポゼッション率も札幌が上回っている。神戸は、チームとして大事にする2つのスタッツで下回っていることが分かる。
ただ、今節に関してはこの2項目は無視しておく。4−0というスコアからの逆算で考えれば、むしろ効果的にゴールを量産したと考えられ、札幌にあえてボールを持たせたという解釈もできるからだ。
とはいえ、パス数で神戸が大きく下回っているのはやや気になる。札幌に比べて神戸はだいたい200本くらいパス数が少ない。ポゼッション率が低いから当然のデータである一方で、堅守速攻スタイルで戦ったという現実が浮き彫りになる。「満足していません」とは、この部分を指していると思われる。
就任から初陣まで、神戸の三浦淳寛監督に与えられた準備期間はたった2日だった。それにもかかわらず、策士・ペドロヴィッチ監督率いる札幌に4−0で快勝した。怒涛のゴールラッシュもさることながら、今季2度目の無失点勝利という理想的な船出。だが、試合後のリモート会見で三浦監督は、神妙な面持ちでこう語った。
「我々のやりたいサッカーができたかどうかという点においては、満足していません」
ここには、三浦監督の自身の采配に対するどんな評価が隠されているのか。その真意を考えてみたい。
まず両チームのスタッツを比較すると、シュート数では札幌が3本多く、ポゼッション率も札幌が上回っている。神戸は、チームとして大事にする2つのスタッツで下回っていることが分かる。
ただ、今節に関してはこの2項目は無視しておく。4−0というスコアからの逆算で考えれば、むしろ効果的にゴールを量産したと考えられ、札幌にあえてボールを持たせたという解釈もできるからだ。
とはいえ、パス数で神戸が大きく下回っているのはやや気になる。札幌に比べて神戸はだいたい200本くらいパス数が少ない。ポゼッション率が低いから当然のデータである一方で、堅守速攻スタイルで戦ったという現実が浮き彫りになる。「満足していません」とは、この部分を指していると思われる。
実際、4ゴールのうち、古橋亨梧の先制点以外はカウンターで奪ったもの。45分の郷家友太の追加点は古橋のカウンターが契機に。62分の古橋の2得点目はアンドレス・イニエスタのロングフィードからの速攻。90分の小田裕太郎のプロ初ゴールも彼の高速ドリブルによるカウンターだ。
札幌がディフェンスラインを高く保って攻撃を仕掛けてくる以上、その背後の広大なスペースをカウンターで狙うのは正しい選択だろう。ただ、バルセロナのような美しいポゼッションサッカーを理想に掲げる三浦監督の哲学からは逸れる。
いずれにしても、今後も“勝利優先”と“美学追求”との狭間で揺れるだろう。この2つのギャップをどれだけすり合わせられるかが今後のテーマになる。
その上で、ひとつの理想的な形が先制点のシーンかもしれない。
酒井高徳が高い位置でボールをキープし、相手DFを食いつかせておいてイニエスタとのワンツーでボックス内に侵入。ドウグラスがニアサイドに走ったことで後ろの古橋がノーマークになり、その状況を見て酒井はマイナスパス気味にクロスを入れる。そして古橋が落ち着いて仕留めた。古橋の奥には郷家友太も詰めていた。
シュートを含めてワンタッチプレーが3つ続いたこのシーンには、5人の選手が呼応している。狭いスペースの中で複数の選手が関与して奪ったこの新体制初得点は、三浦監督の美学にも通ずるものと考えていいだろう。
全体的にはカウンター主体の“満足していない”試合だったかもしれないが、チームで崩して奪ったこの先制点だけは別。今後のチームビルディングにおいて、一つの“物差し”になるかもしれない。
取材・文●白井邦彦(フリーライター)
札幌がディフェンスラインを高く保って攻撃を仕掛けてくる以上、その背後の広大なスペースをカウンターで狙うのは正しい選択だろう。ただ、バルセロナのような美しいポゼッションサッカーを理想に掲げる三浦監督の哲学からは逸れる。
いずれにしても、今後も“勝利優先”と“美学追求”との狭間で揺れるだろう。この2つのギャップをどれだけすり合わせられるかが今後のテーマになる。
その上で、ひとつの理想的な形が先制点のシーンかもしれない。
酒井高徳が高い位置でボールをキープし、相手DFを食いつかせておいてイニエスタとのワンツーでボックス内に侵入。ドウグラスがニアサイドに走ったことで後ろの古橋がノーマークになり、その状況を見て酒井はマイナスパス気味にクロスを入れる。そして古橋が落ち着いて仕留めた。古橋の奥には郷家友太も詰めていた。
シュートを含めてワンタッチプレーが3つ続いたこのシーンには、5人の選手が呼応している。狭いスペースの中で複数の選手が関与して奪ったこの新体制初得点は、三浦監督の美学にも通ずるものと考えていいだろう。
全体的にはカウンター主体の“満足していない”試合だったかもしれないが、チームで崩して奪ったこの先制点だけは別。今後のチームビルディングにおいて、一つの“物差し”になるかもしれない。
取材・文●白井邦彦(フリーライター)