バネガは戦術的に優れているだけではない
8月21日、セビージャはヨーロッパリーグ決勝でインテル・ミラノを3-2と逆転で下し、6度目の王者(前身のUEFAカップから含めて)に輝いている。
セビージャは、アルゼンチン代表MFエベル・バネガが戦いの変幻の中心になっていた。トップ下、アンカーとポジションを上下させ、“フリーマン”のような動き。場合によっては、サイドに流れてコンビネーションによって優位性を作った。
「プレーの流れを読む」
バネガの卓抜とした戦術眼によって、その日のセビージャのサッカーは成立していた。良くも悪くも、“勝負の分岐点”だった。
先制点を失った場面では、敵陣でのセットプレーのこぼれをバネガがインテルの選手にかっさらわれている。これがカウンターの合図となって、PKを献上。一方、同点弾はバネガを中心にパスをつなげ、横への揺さぶりから幅を作り、中をぐらつかせ、最後はヘスス・ナバスのクロスをルーク・デヨングが頭で合わせた。逆転弾も、バネガが老獪なキープでファウルを誘い、自らFKを蹴って、再びデヨングがヘディングで突き刺している。
【動画】バネガの動きをチェック!EL決勝セビージャvsインテルのハイライト
バネガは戦術的に優れているだけではない。
もともと、古典的な背番号10に近い選手だろう。長短のボールを正確に蹴り、視野が広く、決定的なパスだけでなく、持ち運ぶドリブルができるし、シュートも打てる。なかでも、ボールキープ力は突出。ボールを受け、収めると、容易に奪われず、パスでプレーにテンポを出す。無理してボールを取ろうとした相手からはファウルを取って、精度抜群のセットプレーでダメージを与えるのだ。
(同点に追いつかれた)後半、バネガはFKできわどいクロスを送っている。これを相手がクリアしきれず。ジエゴ・カルロスのオーバーヘッドからのオウンゴールで決勝点を奪ったのだ。
セビージャは、アルゼンチン代表MFエベル・バネガが戦いの変幻の中心になっていた。トップ下、アンカーとポジションを上下させ、“フリーマン”のような動き。場合によっては、サイドに流れてコンビネーションによって優位性を作った。
「プレーの流れを読む」
バネガの卓抜とした戦術眼によって、その日のセビージャのサッカーは成立していた。良くも悪くも、“勝負の分岐点”だった。
先制点を失った場面では、敵陣でのセットプレーのこぼれをバネガがインテルの選手にかっさらわれている。これがカウンターの合図となって、PKを献上。一方、同点弾はバネガを中心にパスをつなげ、横への揺さぶりから幅を作り、中をぐらつかせ、最後はヘスス・ナバスのクロスをルーク・デヨングが頭で合わせた。逆転弾も、バネガが老獪なキープでファウルを誘い、自らFKを蹴って、再びデヨングがヘディングで突き刺している。
【動画】バネガの動きをチェック!EL決勝セビージャvsインテルのハイライト
バネガは戦術的に優れているだけではない。
もともと、古典的な背番号10に近い選手だろう。長短のボールを正確に蹴り、視野が広く、決定的なパスだけでなく、持ち運ぶドリブルができるし、シュートも打てる。なかでも、ボールキープ力は突出。ボールを受け、収めると、容易に奪われず、パスでプレーにテンポを出す。無理してボールを取ろうとした相手からはファウルを取って、精度抜群のセットプレーでダメージを与えるのだ。
(同点に追いつかれた)後半、バネガはFKできわどいクロスを送っている。これを相手がクリアしきれず。ジエゴ・カルロスのオーバーヘッドからのオウンゴールで決勝点を奪ったのだ。
バネガが試合のキーマンだったのは間違いないが、それを生かすチーム構造だったことも大きく関係している。
セビージャの選手たちは、まず1対1で鍛え上げられていた。持ち場に入ってきた相手とは激しく格闘する。そこでファウルに及び、劣勢に回ることもあったが、試合を通じてタフに戦い続けた。ボランチのジョアン・ジョルダン、フェルナンドの二人は屈強だったし、セルヒオ・レギロン、ヘスス・ナバスの両SBは攻め上がっては圧力をかけ、守ってはラインを抜かせなかった。
これは、指揮官であるジュレン・ロペテギの功績と言えるだろう。バネガは要所で勝負の起点となっていた。しかしそれを促したのは、チームプレーの質の高さだったのだ。
Jリーグのクラブでも、バネガのような昔ながらの10番タイプのMFを、フリーマンのように仕込み、戦うケースが見られる。しかし、それを成功させるためには、バネガに近い戦術眼と技術、体力が必要になるだろう。さもないと、むしろ弱点となってしまう。
そして何より、チームの戦い方の強度を高める作業が欠かせないのだ。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。
セビージャの選手たちは、まず1対1で鍛え上げられていた。持ち場に入ってきた相手とは激しく格闘する。そこでファウルに及び、劣勢に回ることもあったが、試合を通じてタフに戦い続けた。ボランチのジョアン・ジョルダン、フェルナンドの二人は屈強だったし、セルヒオ・レギロン、ヘスス・ナバスの両SBは攻め上がっては圧力をかけ、守ってはラインを抜かせなかった。
これは、指揮官であるジュレン・ロペテギの功績と言えるだろう。バネガは要所で勝負の起点となっていた。しかしそれを促したのは、チームプレーの質の高さだったのだ。
Jリーグのクラブでも、バネガのような昔ながらの10番タイプのMFを、フリーマンのように仕込み、戦うケースが見られる。しかし、それを成功させるためには、バネガに近い戦術眼と技術、体力が必要になるだろう。さもないと、むしろ弱点となってしまう。
そして何より、チームの戦い方の強度を高める作業が欠かせないのだ。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。