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「攻め続ける」――グアルディオラのバルセロナが体現した“究極のボールプレー”【小宮良之の日本サッカー兵法書】

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2020年04月13日

「車がかりの陣」のような攻撃を繰り出す

イニエスタ(左)とシャビが中盤でゲームを支配したグアルディオラ(右)のバルサは、文字通り敵を圧倒した。(C) Getty Images

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「バルサはとにかくフットボールをプレーする。し続けるのさ」

 ジョゼップ・グアルディオラ監督(現マンチェスター・シティ)はかつて、バルセロナの真理をそう語っている。グアルディオラはバルサの下部組織ラ・マシアで鍛えられ、トップチームでは主力となって数々のタイトルを手にし、監督としてもバルサBを昇格させ、バルサを世界一のクラブに再び押し上げた。それだけに、その言葉は重い。

「勝ったらどうなる、負けたらどうなる、なんてバルサは考えない。プレーそのものに集中する。バルサというクラブで、ヨハン・クライフは進むべき道を示してくれている。我々はその道を、決して外れてはいけない。一つの勝利は、その日だけの勝利ではないのである。20年以上、プレーモデルの熟成に関わってきた、すべての人たちのおかげだ」

 バルサは「敗れても美しい」と言われるエキセントリックなプレーモデルを、時間をかけて革新させてきた。徹底的に自分たちがボールを持ち、速いボール回しで守備を崩し、失ったらそこを攻撃の起点にすべくプレッシングに入り、永遠に攻撃する。失点のリスクを恐れずに。

<攻め続ける>

 それが彼らのポリシーと言えるだろう。究極のボールプレーだ。

 その攻撃戦術は、下部組織からオートマチズム化しているもので、それ故、トップではどれだけ優れた選手であっても、適応するのは時間がかかる。チームが持つプレーリズムに、自分を調和させる必要がある。戦術的な重さが個人よりもグループに置かれており、その集団の中にあって、各々が技術で個性を出す格好だ。

 そうして言葉にするのは簡単だが、プレーそのものは神がかっている。

 バルサの戦い方が極まった時は、相手がなす術もないと言われる。間断なく、攻め寄せる。止まることがない。
 
 それは兵法で言う、「車がかりの陣」に似ている。数百名が部隊ごと、鉄砲、弓、槍、騎馬隊と交互に攻撃を仕掛ける。まずは飛び道具で相手を威嚇し、押しとどめて、槍で囲い込み、混乱させ、騎馬で突破し、蹴散らす。当然、相手は援護を受けて体勢を立て直すが、そこで再び順番を巡らせて鉄砲、弓……と打撃を与える。異なる攻撃形態で連続的に攻めることによって、アドバンテージを得るのだ。

 集団戦の確立により、相手が守備を整える間を一切与えない。

 グアルディオラ監督時代のバルサは、この戦術を十全に体現していた。ボール支配率は80パーセント以上。ほとんど敵陣でプレーし、攻め続け、ゴールを量産している。無敵の強さだった。

 しかし、誰が指揮官でもできるような戦いではない。例えばルイス・エンリケ監督時代のMSN(メッシ、スアレス、ネイマール)という戦術は早い話、固く守ってのカウンタースタイルだった。得点力はグアルディオラ時代と比肩したが、中身は違うのだ。

 車がかりの陣も、かつて名将の誉れ高い上杉謙信が実現した集団戦と言われる。しかし、それも「川中島の戦い」一度だけ。詳細ははっきりしていない部分も多いのだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。
 
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