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ホッフェン会長への侮辱バナー掲示は“正当な抗議”か? ブンデスで頻発した横断幕問題、大切なのは歩み寄りだ【現地発】

カテゴリ:ワールド

中野吉之伴

2020年03月27日

ホッフェンハイム会長を侮辱する差別的バナーで試合が中断

両チームの選手たちとホップ氏、そしてバイエルンのルンメニゲCEOはともにホッフェンハイムのサポーターの前でのみ挨拶をした。 (C) Getty Images

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 サッカーとは誰のためにあるのだろうか。

 ヨーロッパが新型コロナウイルスの影響を受ける2週間ほど前の2月29日、ブンデスリーガ第24節のホッフェンハイム対バイエルン戦が、二度も中断されるという騒ぎがあった。その理由は、サポーターの行動にあった。

 試合中に、バイエルンのファンブロックで、ウルトラスグループが「ホップ、売春婦の息子」と、ホッフェンハイム会長デットマール・ホップを侮辱するバナー(横断幕)を掲げたのだ。

 スタジアムが騒然とする中、バイエルン監督ハンシィ・フリックがすぐさまベンチを飛び出し、怒りの形相を浮かべてサポーターサイドに詰め寄る。メインスタンドでは、バイエルンCEOのカールハインツ・ルンメニゲが、ホップのすぐそばで支えるように立っていた。

 バナーが下ろされて試合は再開されたが、すぐにまた掲げられ、試合は再び中断。そして今度は、バイエルンの新たな取締役となったオリバー・カーンがファンの元へと向かった。

 試合は進んだが、両軍の選手は残りの10分強をパス回しで消化した。対戦相手同士でにパスを送りあったり、話をしたりするだけ。そして試合後は、両チームの選手ならびに監督・コーチ陣は、ホッフェンハイムのサポーターにあいさつし、誰もバイエルンファンの元へは足を運ばなかった。

 後日、バイエルンは「差別にレッドカード!」というコンセプトを改めて強調し、差別問題に真っ向から立ち向かうことを発表している。

 これまで、ホップ氏は一部のファンから、ドイツサッカー界における商業化の象徴として批判にさらされてきた。ところが、バイエルンのウルトラスグループは「ホップへの個人的な攻撃ではない」という声明を発表した。

「あれはドイツサッカー連盟(DFB)への集団罰則への抗議の意を込めてのもの。我々としてはホップを憎悪の対象としようとしたわけではない。自分たちの怒りの強さを表すための表現として、あのように書いたということだ。今回のような批判・中傷が罰則の対象になるというが、それもどうなのだ。確かにきれいな言葉ではないが、毎週のようにスタジアムのあちこちで叫ばれている言葉ではないか」

 彼らが特に問題視しているのが、ドイツサッカー連盟(DFB)の罰則についてだ。ドルトムントのウルトラスが今季ホッフェンハイムのホームゲームでホップを侮辱・脅迫するバナーを出した。DFBは来季から2シーズン、ドルトムントサポーターすべてをホッフェンハイムホームゲームでの出入りを禁止するという罰則を執行している。

 このいざこざの発端は、18年9月22日にさかのぼる。ドルトムントの一部のファンが、ホップの顔にターゲットスコープで照準を合わせたバナーを掲げて罰則対象となった。さらにホップ自身も訴訟を起こし、戦う姿勢を見せた。ドルトムント側の19歳青年が手紙で謝罪したことによりホップ自身の訴訟は取り下げられたが、以後、両者の関係はさらに険悪になっていく。

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