【鹿島担当コラム】連覇を狙うACLでなぜ負けた? 足りなかったのはプレー精度ではなく…

カテゴリ:Jリーグ

広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

2019年09月19日

大事につなごうとするあまり、手数が多くなる

連覇がかかっていたACLはベスト8で敗退。第2レグでは同点に追いつく粘りを見せるも、あと1点が足りなかった。写真:滝川敏之

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[ACL準々決勝第2レグ]鹿島1-1広州恒大/9月18日/カシマ
 
 ホームでの広州恒大とのACL準々決勝第2レグは、1-1のドローで決着。アウェーでの第1レグは0-0で、トータルスコアは1-1だが、アウェーゴールの差で広州恒大のベスト4進出が決まった。
 
 第2レグでは、前半に先制を許す苦しい展開も、後半にセルジーニョのゴールで同点に追いついてみせる。だが、アウェーゴールを奪われている以上、引き分けのままでは勝ち進めない。勝利が絶対条件。最低でもあと1点が必要だったのだが……。
 
 アディショナルタイムのラストワンプレーは、その欲しかった1点が決まっていてもおかしくはなかった。ペナルティエリアに侵入したレオ・シルバが、相手GKをかわして、シュートコースを作る。あとは流し込むだけだった。
 
「あのシュートの打ち方は、ずっと練習してきた」だけに、L・シルバも自信があったはず。しかし、放たれたボールは、必死に戻ってきた敵DFに間一髪でクリアされる。直後、タイムアップの笛がカシマサッカースタジアムに鳴り響いた。
 
 こうした“惜しい”シーンは、試合を通じて、とりわけ攻め込む時間が増えた後半はいくつもあった。このパスが通ればビッグチャンスになる――しかしその都度、広州恒大の選手たちが立ちはだかり、フィニッシュに持ち込めない。あと一歩が、どうしても届かない。
 
 単純に、鹿島の選手たちのプレー精度が足りなかったという見方もできるが、技術面で相手より大きく劣っているとも思えない。ならば、どっちに転ぶか分からないような場面で、ことごとく広州恒大に軍配が上がったのはなぜか。鹿島に足りなかったのはプレー精度ではなく、勝負にかける強い想い、ある意味、通常モードではない“気迫”だったのではないか。
 
「ACLは、“普通通り”にやったら、勝ち進めないのはみんな分かっていたと思う。“普通以上”のものを示さないと、なかなか勝てない」(L・シルバ)
 
 4強進出を楽観視していたわけでもなければ、決して手を抜いていたわけでもないはず。鹿島は必死に戦う姿勢を見せてはいたが、それでも、“普通以上”のものをより多く示していたのは、広州恒大だったように思う。その原動力は、技術以外の部分、勝利への貪欲な欲求であり、そうしたメンタルが相手より先に身体を動かす。一歩を早く出させる。奪えないまでも懸命に寄せて、相手のプレー精度を少しでも狂わせる。ギリギリの際どい攻防で、鹿島は相手の気迫を上回るパワーを生み出すことができなかった。
 
 少なからず、消極的な姿勢も目についた。どこか思い切りを欠いている。相手ゴール前まではボールを持ち運べているが、そこからの崩しで、大事にボールをつなごうとするあまり、手数が多くなる。フリーの選手を探して、サイドを変える。一見、スムーズにボールをつないでいるように見えるが、その間に相手DFに守備の陣形を整える時間を与えてしまう。結果、クロスを入れても撥ね返される確率が高まる。
 
 鈴木満常務取締役強化部長も、ジリジリとした思いで試合を見ていたのだろう。「選手たちはよく頑張っていたと思う。球際でも、本当に戦っていた」とチームの健闘を称える一方で、次のようにも振り返る。
 
「なんだろうな……『俺がちゃんと決めてやる!』とか、自信を持ってやっていないような気がする。勝たなければいけないゲームで、あの前半の入り方、ボールをもらいたくないというか、どこか自信がなさそうだし、ミスを恐れているように映る」
 
 勝負どころのゲームで持てる能力を出し切れなければ、タイトルは遠のくだろう。アジア連覇の夢は潰えたが、まだ“国内3冠”が残っている。まずは、9月25日に控える横浜との天皇杯ラウンド16が、今後を占ううえでのひとつの試金石になる。
 
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

【ACL PHOTO】鹿島 1-1 広州恒大|鹿島ACL連覇ならず。1-1ドローもアウェーゴールの差で広州が浦和との準決勝へ
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