レジェンドの軌跡 THE LEGEND STORY――第50回・ラーム(元ドイツ代表)

カテゴリ:メガクラブ

サッカーダイジェストWeb編集部

2019年08月01日

ドイツ史上最高といわれる「最も賢い」選手

時に地味ながら堅実に、時に鮮やかなプレーでピッチに君臨したラーム。キャプテンとなってからは、仲間たちを精神的にも支えた。かつてバイエルンに所属した宇佐美貴史も、気配りのできるキャプテンだったことを明かしている。 (C) Getty Images

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 本誌ワールドサッカーダイジェストと大人気サッカーアプリゲーム・ポケサカとのコラボで毎月お送りしている「レジェンドの言魂」では、サッカー史を彩った偉大なるスーパースターが、自身の栄光に満ちたキャリアを回想しながら、現在のサッカー界にも貴重なアドバイスと激励を送っている。

 さて今回、サッカーダイジェストWebに登場するのは、優れたサッカーセンスを有し、堅実かつ効果的なプレーと、優れたキャプテンシーで誰からも絶大な信頼を寄せられたドイツ史上最高の選手のひとり、フィリップ・ラームだ。

 バイエルン、ドイツ代表の両方でキャプテンとして世界一に昇り詰めた歴史的な偉人の軌跡を、ここで振り返ってみよう。

――◇――◇――

 1983年11月11日、西ドイツ(当時)のミュンヘンで生を受けたフィリップ・ラームは、地元のゲルンというチームで本格的にサッカーを始め、11歳の時に名門バイエルンのスカウトを受けて下部組織に入団する。

 早い時期から、指導者たちのお墨付きを受け、プロとしての成功も期待されていたという彼は、ユースチームでは2度の全国制覇に貢献した。

 守備的MF、右サイドのMF、DFとしてプレーする小柄な少年は、才能の塊だった。攻守両面で発揮される高度なテクニック、スピード、精力的に上下動を繰り返すスタミナとどんな相手にも突破を許さない精神力、ピッチ全体の状況を把握し、最善の選択ができる戦術眼、そして優れた選手に必要な「サッカーセンス」が、ラームには備わっていた。

 Bチームとのかけもちとなった2002-03シーズン、11月13日にチャンピオンズ・リーグ(ランス戦)でトップチームデビューを果たしたが、ビセンテ・リザラズやウィリー・サニョルといった世界的名手が健在だったこともあり、翌シーズンから2年間はシュツットガルトへ武者修行に出る。

 ここでは、主力として1年目にしてブンデスリーガ31試合に出場して実力を示した他、左サイドも担当してプレーの幅を広げた。また2年目の終盤戦では、右足十字靭帯断裂という初めての大怪我も経験している。

 そのため、05年にバイエルンに復帰してからは、しばらくリハビリに時間を割く羽目となったが、11月に復帰すると左右のSBとして存在感を示し、06-07シーズンはリーガ全試合出場を果たし、早くも主力としての地位を完全に確立した。

 その後、多くの監督がチームに到来し、バイエルンは時に栄光を味わい、時に不振に喘いだが、ラームはどのシーズンでも堅実なプレーを披露。極めてミスが少ないことで、全ての監督の信頼を勝ち取った。

 ある意味、そのプレーは地味とも言えるが、攻撃では正確なクロス、カットインなど、勝利に直接結びつくプレーも多かった。とりわけ09-10シーズン以降は、アリエン・ロッベンと右サイドで見事な連係を見せ、以降、ここから多くのゴールが生まれていった。12-13シーズンには、DFとしては珍しい2桁アシスト(11)も達成している。

 さらに13-14シーズンになると、ジョゼップ・グアルディオラの下、アンカーにポジションチェンジ。スペイン人智将に「彼ほど賢い選手は見たことがない」と言わしめたラームは、さらにインサイドハーフもこなし、中盤でチームを攻守でコントロールするようにもなった。

 また、年齢を重ねるにしたがってチームに影響力を増し、09年に副キャプテン、その2年後にはキャプテンに任命される。静かな性格ゆえに、ぐいぐいとチームメイトを引っ張るというタイプではなかったが、個々に気を配り続け、名実ともにチームのリーダーとなったのである。

 彼がキャリアの最終年となる17年までにバイエルンで勝ち取ったタイトルは、リーガ8回、DFBカップ6回。チャンピオンズ・リーグ(CL)では09-10、2011-12シーズンに決勝へ進出するも、前者ではインテルの軍門に降り、後者では本拠地アリアンツ・アレーナでの決勝という有利な状況ながらも、PK戦の末にチェルシーに栄冠を奪われた。

 しかし12-13シーズン、再び決勝まで勝ち上がり、ドルトムントとの同国対決を2-1で制して、ユップ・ハインケス率いるバイエルンはついに欧州の頂点に立つ。ウェンブリーの夜空に「ビッグイヤー」を真っ先に掲げたのは、腕章を巻くラームだった。

 同年末には、モロッコで開催されたクラブワールドカップで広州恒大(準決勝)、ラジャ・カサブランカ(決勝)を下し、ラームは全てのタイトルを獲得するとともに、世界一クラブのキャプテンという名誉も手に入れた。

 バイエルンでの全獲得タイトル数21は、あのオリバー・カーン(23)に次ぐ2位の記録である。
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