先発したカイオは「ボールを保持できる展開」をもたらした
J2リーグ23節のヴァンフォーレ甲府戦終了後、強化部のスタッフは「100点!」と満面の笑みを見せた。当然だろう、先発で出場したカイオ・セザールは中盤の起点としてチームを牽引し、途中出場したビクトル・イバルボは終了間際の89分に、1-0の勝利を呼び込む値千金の決勝ゴールを叩き込んだのだ。夏の補強でチームに加わったふたりにとって、これ以上はないV・ファーレン長崎でのデビュー戦と言っていい。試合後の手倉森誠監督が「ふたりとも理解が早く、なおかつ正しく理解してくれている」と賛辞を惜しまなかったのも無理のないことだろう。
試合前の時点ではふたりがどの程度の働きを見せるかは未知だった。来日2年目ながらほとんど公式戦出場がないカイオには『実戦における試合感覚の少なさ』、イバルボには昨年に負った左膝前十字靱帯断裂からの復帰後、『コンディションが戻っていない』という不安があったからだ。
試合前の時点ではふたりがどの程度の働きを見せるかは未知だった。来日2年目ながらほとんど公式戦出場がないカイオには『実戦における試合感覚の少なさ』、イバルボには昨年に負った左膝前十字靱帯断裂からの復帰後、『コンディションが戻っていない』という不安があったからだ。
それは無用の心配だった。
先発で出場したカイオは、ボールを奪ってからの効果的なボールの持ち上がりと、落ち着いたパスで、中盤の底からボールを前に運べない、またはボールを前に運ぶ途中にロストしてしまい、厚みのある攻撃へつなげられない、というチームの弱点を見事にカバー。前半は後に重くなることが多かったチームに、高い位置取りとコンパクトな形からの「ボールを保持できる展開」(大竹洋平)をもたらし、川崎フロンターレでも高く評価されていたポテンシャルを存分に見せつけたのである。
一方、混戦を勝ちきる切り札として、個の力で状況を打開しゴールを奪うフィニッシャーとして獲得したイバルボが、いきなり活躍できるかはカイオ以上に難しいと思われていた。手倉森監督が「彼にとっては50~60パーセントだろう」と指摘したコンディションの問題だけでなく、1か月前からチームに合流していたカイオに対して、甲府戦4日前の合流という時間的な問題があったからだ。
実際、66分にピッチに立ったイバルボは、怖さや強さは感じさせたものの、動きの重さを見せるシーンも多かった。それでも終了間際に「自分のところにボールがくるとは思っていなかった」と言いながらもゴール前へのパスに鋭く反応し、角度のないところからゴールを決めたのはさすがの一言だ。求められる勝負強さを見事に発揮してのけたと言っていいだろう。