「思い切りよく冷静に」無得点を脱した"町田のエース"が描くゴール量産のイメージ

カテゴリ:Jリーグ

郡司 聡

2019年03月29日

「PKを蹴らせてほしい」。中島は仲間にそう直訴した。

町田の攻撃を背負う中島(30番)は、5節の鹿児島戦で今季初ゴールを決めた。写真:滝川敏之

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 3連敗で迎えた5節、敵地での鹿児島ユナイテッドFC戦。43分だった。岡田優希のCKから相手DFのクリアボールを拾ったロメロ・フランクがペナルティエリア内でファウルを受けてPKを獲得。絶好の先制のチャンスに、中島裕希はチームメートにこう告げた。
 
「PKを蹴らせてほしい」
 
 仲間にそう直訴した中島は、冷静に、そして慎重にPKを鹿児島ゴールに沈めた。
 
 前半を1−0で折り返した町田は、後半に追加点を奪えなかったものの、虎の子の1点を守り切り、勝点3を町田に持ち帰った。サポーターの下へ挨拶に向かうまで、4試合ぶりの勝利を勝ち取った町田の選手たちは、思い思いにチームメートとハイタッチを繰り返す。右サイドバックの大谷尚輝は「開幕戦の勝利がすごく前に感じてしまうぐらい、みんなのメンタリティは厳しかった」と明かした。
 
 2節で柏レイソルに今季初黒星を喫すると、モンテディオ山形には0−3、ツエーゲン金沢には1−6と大量失点での敗戦が続いた。「みんなが自信を失っているように感じる」。中島は選手たちのメンタリティの変化を敏感に察知していた。

 そして3シーズン連続ふた桁得点を成し遂げている中島自身も、チームの成績と比例するかのように、思うに任せない序盤戦を過ごしていた。町田に加入以降、過去3シーズンは2節にシーズン初得点を決めてきたものの、今季の中島は4節を終えてもノーゴール。鈴木孝司がチームを去り、“エース”の看板を新たに背負うことになった中島が、ゴールを奪えていない状況は、チームの成績に影響を及ぼしていた。しかし、公式戦初対戦となった鹿児島戦でPKとはいえ、今季初得点を奪取。「みんなも自信を失いかけていたと思うけど、この勝利で自信を取り戻して、この勝利を良いきっかけにしたい」。こうした発言は、チーム内だけではなく、自分自身にも向けられていた言葉だった。
 
 クラブ史上最高順位である4位を記録した昨季。町田は9節から11節まで喫していた3連敗からの3連勝でチーム状態が復調し、最高のシーズンにつなげた“成功体験”がある。連敗を止めた町田は、3月30日の愛媛FC戦から待ち受けている3連戦でその再現を狙う。「1点を取って粘り強く戦って勝ち切る。スコアも含めて、鹿児島戦では町田らしい勝ち方をできた」(中島)町田が、真価を問われるのは、これからだろう。それは、ノーゴールという状況を脱した中島にも、同じことが言える。
 
「チャンスメークをした後にゴール前まで、また出て行く動きが必要。思い切りの良さを出して、チャンスの場面でいかに冷静に決めるか。それに尽きる」
 
 シーズン序盤の悔しい結果を挽回するために、ゴール量産へ――。そのイメージは、できている。
 
取材・文●郡司聡(フリーライター)
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