「点が取れないなら取らせるな」課題の攻撃面に"あえて触れない"手倉森監督の巧みなマネジメント術

カテゴリ:Jリーグ

藤原裕久

2019年03月29日

一歩間違えば状況を悪化させかねない指示ではあったが…

5節終了時点で2勝1分2敗の11位。上に食いついていくためにも、6節の大宮戦は勝利がほしいところだ。写真:徳原隆元

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 4節終了時点で1勝1分2敗の14位と、苦戦の続いていたV・ファーレン長崎が5節の愛媛FC戦に勝利した。その勝ち方は決して格好が良いものではなかった。ボール保持率でもシュート数でも相手に劣り、多くの決定機にもさらされた。だが「これ以上、上に離されるわけにはいかない」(手倉森誠監督)とした試合での勝利は、何にも増して必要なものだった。
 
 愛媛戦前、チームの状況は切迫していた。開幕戦の横浜FC戦こそ長谷川悠の劇的なゴールで勝利したものの、2節のアビスパ福岡戦を0-0のドローで終えると、続く水戸ホーリーホック戦とヴァンフォーレ甲府戦では2連敗と苦戦が続いていたのである。不振の最大要因となったのは得点力だ。玉田圭司、イ・ジョンホ、亀川諒史、大竹洋平といったタレントを補強しながら、チームの得点数はリーグ4試合でわずか1に止まっていたのである。
 
 その原因を吉岡雅和はこう指摘する。「走力が落ちている印象があります。だからプレッシングで相手をハメられないように感じるし、カウンターも少ない」。別の視点から問題点を指摘するのは新里涼だ。「J1で守勢に回ることが多かったせいか、受け身の姿勢を引きずっている印象があります。だからボールを奪ってもゴールまでの距離が遠い」。

 ゴールまでの距離が遠くなれば、カウンターやプレッシングで走力を発揮することは難しい。結果的に「慎重に戦う余り大胆さを欠いた」(手倉森監督)状態となったチームは、効果的な攻撃を展開できなくなっていたのである。だからこそ手倉森監督は、愛媛戦前にあえて攻撃には触れず「点が取れないなら取らせるな」と話して守備を徹底させて、攻撃の意識をリセットさせている。それは一歩間違えば状況を悪化させかねない指示ではあったが、10分にチェ・キュベックが挙げた1点を守りきって勝利したことで、守備への自信を甦らせ、チーム内の焦りを軽減させることに成功した。

 愛媛戦ではもうひとつ好材料があった。それが澤田崇の復調だ。圧倒的な動き出しの速さとスタミナでチームを支えてきた澤田だが、今季は右サイドハーフで起用される中で、力を出しきれない試合が続いていた。それが左サイドハーフに入った愛媛戦では、久しぶりにキレのある突破を披露。まだ本調子とまで言える状態ではないが、「左のほうがやりやすかったし、自分でも今までよりやれたと思います」と語るその表情には、完全復活の気配が感じられる。澤田が本来のプレーを取り戻せば、攻撃の改善が一気に進むと予想されるだけに、今後の澤田には要注目というところだろう。
 
 もちろん、それで全ての問題が解決するわけではない。だが「一気に全て解決する問題じゃない。辛抱強くクリアにしていって、リーグの中盤や終盤で形になれば良い」と言うとおり、今は愛媛戦のように目の前の壁を一つひとつ乗り越えていくことが重要だろう。その乗り越えた壁の数こそが、チームが強くなるチャンスの数なのだ。

取材・文●藤原裕久(フリーライター)
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