著者が移籍劇の当事者に!! 知られざるフェルナンド・トーレス、ミラン加入時の秘密

カテゴリ:メガクラブ

ジャンルカ・ディ・マルツィオ

2014年09月22日

モウリーニョとミランの友好的な関係が実現させた2つの移籍劇。

出場機会を求め、年俸ダウンをも受け入れたトーレス。第3節のユベントス戦で途中出場し、セリエAデビューを果たした。得点力はもちろんだが、ミランに新たな攻撃オプションをもたらすことも期待される。 (C) Getty Images

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 毎年恒例となっているメルカート終盤での“バーゲンセール”で、ミランが今夏手に入れたのが、チェルシーのフェルナンド・トーレス。この話が具体化したのは、マリオ・バロテッリのリバプール移籍が現実的になってからだが、実はミランの当初の本命はトーレスではなく、マンチェスター・ユナイテッドのハビエル・エルナンデス“チチャリート”だった。
 
 ミランに近い人物が私に、「イタリアでチチャリートの仲介エージェントをやっているのは誰か教えてほしい」と連絡してきたのは、8月19日か20日頃。私が知っていた仲介人は、ローマに拠点を置くジュッフリーダという、若いがとても優秀なエージェント。ロドリゴ・パラシオ(インテル)やレアンドロ・カスタン(ローマ)の代理人を務め、チチャリートのメキシコ人代理人とも、トーレスの代理人であるガライ女史とも仕事をしている。
 
 私がつなぐ形でミランとコンタクトを取ったジュッフリーダは、ミランのアドリアーノ・ガッリアーニ副会長に、チチャリートだけでなくトーレスも獲得の可能性があると伝え、そこから話が進んでいった。
 
 しかし、交渉は簡単ではなかった。最大のネックは、670万ユーロというトーレスの高年俸。ガッリアーニ副会長はジュッフリーダとガライに対し、「ミランが出せるのは350万ユーロまでだから、残りはチェルシーに負担してもらえるように交渉してほしい」と要望した。
 
 それを受けてガライは、チェルシーのマネージングダイレクターであるグラノフスカヤ女史と、年俸負担あるいは移籍手当としての一時金を求める話し合いの席に着いた。この“女同士の交渉”は、グラノフスカヤ女史の勝利に終わる。「チェルシーはトーレスをミランにプレゼントするも同然なのだから(トーレスとチェルシーの契約は16年までなので、ミランとの2年間の無償レンタル契約はフリーでの完全移籍に相当)、これ以上の負担は不可能」というのが、その理屈だ。
 
 結局は手ぶらで帰ってくる羽目になったガライは、ガッリアーニ副会長と再交渉。最後は年俸400万ユーロで合意に至った。昨シーズンのカカ(今夏にオーランド・シティ経由でサンパウロに移籍)と同じように、トーレスも出場機会を得るために大幅な年俸ダウンを受け入れる格好になったわけだ。
 
 なお、ミランはこの年俸ダウンをトーレスに呑ませるのと引き換えに、2年間のレンタル期間が終了した時には、改めて1年契約をオファーすると約束している。ただ、この契約書は今のところ、ガッリアーニ副会長の机の引き出しのなかにしまわれている。
 
 ところで、このトーレスのミラン移籍成立には、実はチェルシーの監督であるジョゼ・モウリーニョも大きな役割を果たしている。当初から、トーレスにこのオファーを受けるよう勧めるなど、背後から後押していた。
 
 インテルの監督時代から、モウリーニョは宿敵ミランの首脳であるガッリアーニ副会長とは友好的な関係にあり、他の監督やクラブ首脳との間にあったような軋轢は一度も生んでいない。トーレス移籍が成立した時には、ガッリアーニ副会長に「私はミランに悪いようにはしない、唯一のインテリスタだ」というショートメッセージと送ったというエピソードもある。
 
 付け加えると、モウリーニョはマルコ・ファン・ヒンケルのレンタル移籍に関しても、ミランとガッリアーニ副会長をバックアップしている。当初は本人がミラン行きを拒んだが、チャンピオンズ・リーグの登録リストから外し、移籍を受け入れるよう促したのだ。
 
 契約形態は100万ユーロでの1年レンタルで、20試合以上に出場すれば、それが50万ユーロに値下げになるという条件が付いている。チェルシーはファン・ヒンケルが出場機会を得て成長してほしいと願っており、手放す気などいっさいない。3シーズンの“修業”を終えて今シーズン、アトレティコ・マドリーから帰還したティボー・クルトワの再現を狙っているのだ。

ワールドサッカーダイジェスト2014年10月2日号より

 
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
◇1974年、イタリア・ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のテレビ局でジャーナリストとしてのキャリアをスタート。2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。70~90年代にナポリ、ジェノア、レッチェなどの監督を務めた父ジャンニを通して得た人脈を活かしてカルチョの世界に広いネットワークを築き、移籍マーケットの専門記者という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、13年1月にジョゼップ・グアルディオラ監督のバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国からも注目を集めている。現在、ワールドサッカーダイジェストで「移籍市場ここだけの話」を連載中。
 
翻訳:片野道郎
 
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