アトレティコ・マドリー対ユベントスが、チャンピオンズ・リーグ（CL）決勝トーナメント１回戦屈指の好カードであることに、異論を挟む者は少ないだろう。

「ユーベの武器である組織力にクリスチアーノ・ロナウドが持つプラスアルファがうまい具合にハマり、今シーズンの快進撃に繋がっている」

　アトレティコのディエゴ・シメオネ監督がそう言って警戒を示すように、ユーベの新エース、クリスチアーノの活躍が、この試合の勝敗を左右するだろうこともほぼ間違いない。

　ここまでセリエAで11ゴール（17試合）、CLで１ゴール（５試合）と、ユーベに移籍してからもクリスチアーノの得点力に衰えは見られない。

　そもそもが個性の強いソリストであるがゆえに、それほど苦労することなくチームの戦術にフィット。周囲との連携もスムーズで、頻繁に左サイドに流れて囮役を買って出るマリオ・マンジュキッチに、アジリティーとテクニックを高次元で併せ持つパウロ・ディバラと、ともに前線を構成するふたりのアタッカーとの役割分担も明確だ。

　その中でクリスチアーノは、アタッキングサードを幅広く動き回りながら攻撃を牽引。サイドに流れてボールを引き出し、そこからドリブル突破を試みたり、味方のサイドバックの攻め上がりを待って２対１の数的優位な状況を作り、素早いパスワークで相手DFを翻弄したり、前線でポスト役を担い２列目からの飛び出しを促したりと、実に多様な働きを見せている。

　セリエAとCLを合わせて「７アシスト」というハイスコアは、必然の結果と言えるだろう。
 

　また、サイドに流れた際に見せるドリブルにしても、スポルティング・リスボンやマンチェスター・ユナイテッドでウイングとしてプレーしていた、10代後半から20代前半を彷彿とさせる切れ味が蘇っている。

　言うまでもなくクリスチアーノは、こうした幅広い貢献を、ゴール前でこれまで通り高い決定力を発揮しながら披露しているのだ。

　マドリー時代には飽くなき向上心の裏返しとして、自分の思うようにいかないときは傍から見てもすぐに分かるほど明らかにナーバスな心理状態でプレーしているケースが少なくなかったが、ユーベではそうした姿も見せていない。

　より成熟し、よりトータル能力に磨きをかけたニューバージョンのクリスチアーノは、マドリー時代よりもアタッカーとしての凄みが増した印象すらある。

　ユーベのレジェンドで、現在はクラブの副会長を務めるパベル・ネドベドも、そんな後輩に対して称賛を惜しまない。「クリスチアーノはこれまでCLで輝かしい実績を残してきた。（ノックアウト方式で行われる）決勝トーナメント以降、その得点力はさらに威力を増すだろう。彼がユーベにとって、欧州制覇の最大のキーマンであるのは間違いない」

　このネドベドをはじめとする周囲の期待に応え、「CL優勝請負人」としてのミッションを果たせるのか。手の内を知り尽くすアトレティコとの一戦は、新境地を開拓しつつあるクリスチアーノにとって、みずからの実力を測るうえでの格好の試金石となりそうだ。


文●ラディスラオ・J・モニーノ（エル・パイス／アトレティコ番記者）
翻訳：下村正幸
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