吉田が語るプレミアの猛者たち|ルイス・スアレス

カテゴリ:メガクラブ

田嶋コウスケ

2014年03月10日

8割止められても、あとの2割でやられてしまう。

出場23試合で24ゴールと、1試合に1点以上のハイペースで量産するスアレス。吉田麻也が肌で感じたその“凄み”とは――。 (C) Getty Images

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 23試合で24ゴールを量産し、リバプールを優勝争いの真っ只中に押し上げている最大の原動力だ。

 今シーズン開幕前の移籍騒動から一転、ジェラード不在の試合でキャプテンマークを託されるまでに信頼を回復し、改めてクラブに忠誠を誓った。

 いまがハッピーだと、そう笑顔で語るルイス・スアレス。

 今シーズンのプレミアリーグを席巻し、リーグMVPが確実視されるウルグアイ代表のストライカーは、ブラジル・ワールドカップでの活躍も期待される、大会の主役候補のひとりだ。

 そんなスアレスの多角的解剖を試みた。地元紙記者による独占インタビューで心情に、サウサンプトンでプレーする吉田麻也の証言からその凄さに迫ってみたい。

 イングランド在住のライター田嶋康輔氏が、スアレスと対峙した際の吉田の“証言コメント”から、その凄さを炙り出す。

――◆――◆――

「いやぁ、あの動き方は半端ないね」

 プレミアリーグ28節サウサンプトン対リバプール戦後の取材エリアで、吉田麻也がひときわ声を大きくした場面があった。リバプールのウルグアイ代表FW、ルイス・スアレスについて質問が及んだときである。

 3-0でリバプールが勝利した一戦で、スアレスは1ゴール・1アシスト。さらにはPKまで獲得し、試合で生まれた全ての得点に絡んだ。「偉大な選手」(吉田)との言葉通り、まさにスアレスの一人舞台であった。

 この試合で吉田はベンチスタート。クロアチア代表CBのデヤン・ロブレンが怪我から復帰したためにピッチには立てなかったが、レギュラーとしてフル稼働した昨シーズンのプレミアリーグで、スアレスとは二度対峙している。ウルグアイ代表FWの特長は頭に焼き付けているとはいえ、それでもベンチから見つめたスアレスのプレーに驚きを隠せなかったようだ。

 スアレスの凄みが凝縮されていたのが、相手DFのマークを外す動き。とりわけ、敵陣でボールがサイドに渡ったとき、いかにフリーになるか。その狙いが明確だった。

 通常マークにつくDFは、ボールと相手選手を同時に見ながら対応するが、スアレスの場合は一筋縄でいかない。まずサイドにボールが出たそのタイミングで、強烈なスピードでペナルティーエリア内へ突進。真っ先にゴール前へ走り、得点を取れそうなポジションを見つける。サイドの選手をチラっと確認するだけでエリア内に突入するから、虚をつかれたDFが置き去りにされるケースが少なくない。

 ただ、スアレスが嫌らしいのは、これだけで終わらないことだ。自分にパスが出てこないと判断すれば、そのダッシュを急ストップ。あるいは、DFの身体の向きと逆の方向へと、再びダッシュを加速させる。狙いは、相手マーカーのバランスをいかに崩すか。ボックス内でフリーになるために、DFとの駆け引きを何度も何度も繰り返すのである。吉田は語る。

「あの動き方は半端ないね。嫌らしい。(サイドからラストパスが入る)ひとつの場面で、パスをもらえるチャンスを2、3回は作るから。まあ、守るほうとしては大変ですわ」

 もちろん、ボールが足下に入った後も気は抜けない。スアレスの場合、マーカーから半歩だけでも抜け出せば、シュートまでつなげてくる。ほんのわずかな隙間が空くと、必ずと言っていいほどシュートを撃つのである。そのチャンスを呼び込もうと、DFに対してチャレンジをひたすら続ける。

 象徴的だったのが、後半ロスタイムにスアレスがPKを獲得した場面。「中→縦」と二度にわたって鋭い切り返しを見せると、マーカーのジョゼ・フォンテは体勢を大きく崩し、ウルグアイ代表FWの足を思わず引っ掛けた。足を出さなければ、スアレスのシュートレンジ。だが足を伸ばせば、PKを与えてしまう。「あの場面は、絶対に切り返してくると思った」と試合後に吉田は語ったが、分かっていても止められない「巧さやしたたかさ」も、スアレスの強みと言えるだろう。吉田は続ける。

「高い決定力に加え、90分を通して嫌なところをひたすら突いてくるから、こっちは気が抜けない。1対1の場面でボールを奪えることもあるけど、下手したら抜かれることもある。一か八かの仕掛けをしてくるから、8割止められても、あとの2割でやられてしまうことがある。10回中10回きっちり守らなければいけない守備側からすれば、非常にやりにくい相手です。彼は10回トライして、そのうちの2回で勝てばいいって考えているんでしょうね」

 たしかにスアレスと対峙するDFは、集中力を持続させなければならない。最終ラインでパスを回せば、DFがトラップしたそのタイミングでボールカットを狙ってくる。フィフティーフィフティーのルーズボールにも「異様な強さ」(吉田)があるというから、いい加減な対応は無論できない。

 サウサンプトンのロブレンとフォンテのCBコンビは、そんなスアレスに最後まで翻弄されつづけた。28節を終え24ゴールを奪い、2位に6ゴール差をつけてプレミア得点王争いを独走中。好調リバプールを前線から牽引している。「世界トップクラスのストライカー」と吉田が絶賛するように、サウサンプトン戦でも眩しすぎるほどの存在感を見せつけた。
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