一度は現役生活を離れた男が、衝撃の復活を果たした。

　現地時間９月８日、オランダ２部のスパルタ・ロッテルダム対FCアイントホーフェンの一戦で、元オランダ代表MFのロイストン・ドレンテが移籍後初ゴールを決めて、話題となっている。

　そのキャリアは希有なものだ。2005年、18歳のときに名門フェイエノールトでプロ生活をスタートさせたドレンテは、07年のU-21欧州選手権で大活躍してMVPに輝く。同年夏にはレアル・マドリーに移籍し、次代を担う若手として大きく注目された。

　しかし、全てが順調に進んでいた韋駄天のキャリアは、その後、一転する。

　銀河系軍団の激しい競争に敗れて挫折を味わうと、その後は、エルクレス（スペイン）、エバートン（イングランド）、アラニア・ウラジカフカス（ロシア）、レディング（イングランド２部）、シェフィールド・ウェンズデイ（イングランド２部）、カイセリスポル（トルコ）と渡り歩くも、鳴かず飛ばずで結果を残せない日々を送った。

　そして、16年の夏にUAEのバニーヤースを解雇されてからは“浪人生活”を送り、昨年２月、ドレンテは29歳で現役を引退。この時の想いを、のちに「ハッピーじゃなかった。疲労感があって元気もなく、絶望感もあった。キャリアは充実したものじゃなかった」と告白している。

　そんな失意の元オランダ代表が、新たに人生の活路を見出したのは、ラップだった。引退してすぐに、『Roya2Faces』という名前で『Paranoia』という曲をリリースしたのだ。

　しかし、ドレンテはサッカーへの情熱を捨てきることはできなかった。復帰を決意し、今年１月に故郷のクラブ、オランダのスパルタ・ロッテルダムと１年契約を締結。プロキャリアを再開したのである。

　そして出場４試合目、FCアイントホーフェン戦でついに、豪快な一撃を見舞った。

　左ウイングバックで先発出場した31歳は、74分、味方からのロブパスを相手のペナルティーエリア内左で受けると、角度のないところから左足で一閃！　強烈な一撃をファーサイドへ決めたのだ。

　フェイエノールト時代にはリーグ戦での得点がなく、12年越しに母国で決めた“初ゴール”。ドレンテは試合後、感慨に浸りながら、電撃復帰への想いを語った。

「本当に気持ちがいい。最高な気分だ。俺は幸せな男だと、つくづく感じているよ。ここに復帰するため、多くの人に助けてもらってきたし、そうした仲間には心から感謝している。でも結局、最後は自分自身でやらなきゃいけなかった。だからこそ、今日の自分を誇りに思える」

　復帰後初ゴールを決めて喜びに浸ったドレンテ。かつて、天才と呼ばれながらも挫折を味わった韋駄天は、もしかすると、いまこそ、キャリアの絶頂を迎えているのかもしれない。