其の壱――1998年W杯準決勝

リードされたフランスを救ったテュラム。彼の代表チームにおけるゴールは、この試合でのみ記録された。パルマでチームメイトだったスタニッチも、これには驚きを隠せなかったという。 (C) Getty Images
多くの激戦が展開されたロシア・ワールドカップも、あとは3位決定戦と決勝戦を残すだけとなった。
数ある強国を蹴落としてファイナリストの座を手にしたのは、フランスとクロアチア。かたや決勝トーナメントの3試合全てを90分以内で制し、かたや3試合全てが延長戦にもつれ込み、うち2試合はPK戦に勝敗が委ねられるという、対照的な道のりを辿ってきた。
ともにワールドクラスのタレントを多く擁し、組織力もトップレベル、今大会を勝ち抜く上で強靭な精神力も身につけているだけに、決勝では好勝負が期待される。
そんな両国はこれまで、5回(W杯1回、EURO1回、親善試合3回)対峙しており、フランスが3勝2分けと通算成績では大きくリードしている。
ここでは、新たな歴史の創成を前に、過去に両国がメジャーイベントで顔を合わせた2試合を、当時のサッカーダイジェスト記事で振り返ろう。まずはフランスが初優勝に歓喜した1998年大会、準決勝での激闘だ。
数ある強国を蹴落としてファイナリストの座を手にしたのは、フランスとクロアチア。かたや決勝トーナメントの3試合全てを90分以内で制し、かたや3試合全てが延長戦にもつれ込み、うち2試合はPK戦に勝敗が委ねられるという、対照的な道のりを辿ってきた。
ともにワールドクラスのタレントを多く擁し、組織力もトップレベル、今大会を勝ち抜く上で強靭な精神力も身につけているだけに、決勝では好勝負が期待される。
そんな両国はこれまで、5回(W杯1回、EURO1回、親善試合3回)対峙しており、フランスが3勝2分けと通算成績では大きくリードしている。
ここでは、新たな歴史の創成を前に、過去に両国がメジャーイベントで顔を合わせた2試合を、当時のサッカーダイジェスト記事で振り返ろう。まずはフランスが初優勝に歓喜した1998年大会、準決勝での激闘だ。
――◇――◇――
実行に移されていた。
クロアチアのプランは、ホームの利を活かして序盤から攻勢に出てくるであろうフランスに対し、とにかく前半は無失点で切り抜け、後半に勝負をかけることだった。つまり、準々決勝のドイツ戦(3-0の勝利)同様、最初は相手にペースを握られていても、粘り強く守りながら、カウンターでゴールを奪う。それが狙いだった。
予想通り、フランスがキックオフ直後から仕掛ける。2分、ジョルカエフが右サイドを突破し、ギバルシュに繋ぐ。そして彼がヒールで落としたところをジダンが叩く。さらに8分、プチからパスを受けたジダンがミドルを放ち、10分にはまたしてもプチ→ジダンのコンビでシュートまで持ち込む。
今大会好調のプチが積極的にボールに絡むことによって、クロアチアの中盤のマークが曖昧になり、ジダンがフリーになるケースが増えたのだ。
流れは完全にフランスだった。ジャッケ監督も「いける」と踏んだのだろう。30分、早くも右サイドの切り札、アンリを投入し、勝負に出る。
だが、この時間帯をビリッチをはじめとしたDFラインが辛抱強くしのいだことで、個々のキープ力に優るクロアチアが、じわりとゲームの流れを引き戻していく。
35分、シミッチのスルーに抜け出したアサノビッチが、右足であわやのシュートを放つと、その3分後にはスタニッチのセンタリングをビリッチがボレーで合わせるなど、クロアチアが少しずつ良いかたちを作り始める。
そして、後半開始直後だった。アサノビッチがデシャンとのボール争奪戦に勝ち、得意の左足でDFの裏を突く見事なラストパス。これをシュケルが冷静にワントラップし、GKバルテスの脇を抜く。クロアチア、先制!
だが、完全に推移していた彼らのプランも、ここで突然打ち切られる。先制ゴールのわずか1分後、ボバンのミスからジョルカエフ→テュラムと繋がれ、あっという間に同点とされると、その後はホームの大声援をバックに勢いづいたフランス相手に、防戦一方。50分過ぎには立て続けにCKから決定機を与えるなど、完全に浮足立ってしまった。
結局、69分にまたしてもテュラムの豪快な左足にゴールを割られ、クロアチアは沈んだ。ブランの退場もあり、タイムアップまで諦めずに戦った彼らだが、デサイーの壁は厚かった。
それでも、クロアチアの健闘は称賛に値する。初出場でベスト4。彼らの去り際は、清々しかった。
※『1998年フランス・ワールドカップ決戦速報号』より。一部修正
◇1998年7月8日 サンドニ/スタッド・ドゥ・フランス
・フランスW杯準決勝
フランス 2-1 クロアチア
得点者:フ=テュラム(47・69分) ク=シュケル(46分)
フ:GKバルテス、DFテュラム、ブラン、デサイー、リザラズ、MFデシャン、カランブー(30分アンリ)、ジダン、プチ、FWジョルカエフ(74分ルバフ)、ギバルシュ(69分トレゼゲ) 監督:ジャッケ
ク:GKラディッチ、DFシミッチ、スティマッチ、ビリッチ、MFスタニッチ(90分プロシネツキ)、ソルド、ボバン(65分マリッチ)、アサノビッチ、ヤルニ、FWヴラオビッチ、シュケル 監督:ブラゼビッチ
退場:ブラン(74分)