「予想以上にやれている」長崎が、それでもJ1初勝利をあげられない理由

カテゴリ:Jリーグ

藤原裕久

2018年04月11日

「経験不足」は明らか。勝負所を見極める目を育てたい

徳永はJ1経験が豊富だが、他の選手たちは……。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 ここまでの走行距離やスプリント数が示しているように、チームの伝統であるハードワークはJ1でも十分に通用している。課題だったボール支配率も着実に改善が進んできた。ルヴァンカップを含むここまでの公式戦9試合で14得点を奪っているように、J2からの昇格チームが苦しむ得点力という壁もクリアできている。他のJ1チームからも「戦前の予想以上にやれている」と言われることも少なくない。

 それでも長崎がリーグ6試合で得た勝点はいまだに2。今回こそはと意気込んだFC東京戦でも、ディエゴ・オリヴェイラに前にハットトリックを許して2-5で敗戦し、初勝利はならなかった。
 
 試合後、高木琢也監督が「今季初めてと言って良いほど、攻守両面でグループとしての打開ができなかった」と振り返ったように、個で力の差があるFC東京の選手たちに対して、長崎の選手が単独で勝負を挑んでしまうシーンが何度も見られた試合だった。サイドで先発した米田隼也も「相手のサイドバックはサイドハーフと連係して常に2対1の状況を作ってきた。数的不利の状況にされてしまった」と連係面で後手に回ったことを認めている。

 単純な選手個々の能力では他チームに見劣りする長崎にとって、個を組織で上回るための連係や連動性は勝つための生命線と言って良い。そこで遅れを取ったのだから敗戦も当然だろう。
 
 なぜチーム本来の連係や連動性が発揮できなかったのか。それこそがチームがいまだリーグで初勝利をあげられない理由のひとつである「経験の不足」だ。

 FC東京戦に先発した長崎の選手のJ1での試合出場数を見ればよく分かる。徳永悠平と徳重健太こそ、それぞれ364試合と113試合を記録しているが、ふたりに次ぐ出場数は澤田崇の12と一気に下がり、澤田に次ぐ中原彰吾は6に留まる。今季初めてJ1を戦っている選手が大半なのだ。対するFC東京の先発は、最もJ1出場数が少ないDF小川諒也でも25を記録しており差は歴然だ。

 その差をJ1のスピードや強さを想定したトレーニングによって補うことで、対応しているのが長崎の現状だ。だが真剣勝負の場で代表クラスの実力を持つ選手が見せるような本気は、トレーニングだけで対応できるものではない。その差が、個で勝負する場面とグループで対処する場面の使い分けや、リスクを取る場面とそうでない場面の判断の遅れとなり、チャンスに得点を決められない、ピンチであと一歩踏ん張れないことへとつながっている。
 
 試合後の髙杉亮太が「相手は勝負所が分かっていた」と語っていた「勝負所」の部分と言っていいだろう。この差を埋めていくことが、今後の長崎にとって課題となるわけだが、ここはあえてFC東京の長谷川健太監督が2失点した自チームに向けた「こういう試合を通じて経験を積むことが先に生かされる」という言葉を心に留めておきたい。敵将の言葉も含めて、敗戦をどれだけの経験とできるか、そこにリーグ戦勝利のカギはあるはずだ。
 
取材・文●藤原裕久(フリーライター)
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