３月下旬の代表ウィークは、各国で国際Aマッチが行なわれたが、今季Jリーグでチャナティップ（札幌）、ティーラシン（広島）、ティーラトン（神戸）の３名がプレーするタイ代表も、国内で開催された「キングスカップ」に参戦。かつては日本代表も参加したこともある、伝統ある大会だが、タイ・サッカー界を取り巻く環境も大きく様変わりを見せている。現地取材を行なった記者がレポートする。（取材・文●佐々木裕介）



「オーバメヤン、祖母他界でキングスカップ欠場へ」
　そんなニュースが、タイのサッカーファンをがっかりさせたのは想像に難くない。
 
　FIFA国際Aマッチが行なわれた３月下旬、日本代表がベルギー遠征を行なう裏で、同じアジアのライバルたちも６月に迫ったロシア・ワールドカップや来年１月のアジアカップへ向けた強化に余念がない。
 
　そんななか、東南アジアの雄・タイ代表は、スロバキア代表、UAE代表、ガボン代表を自国へ招き、キングスカップを開催した。今大会一番の注目選手は、ガボン代表の絶対的エース、ピエール＝エメリク・オーバメヤン（アーセナル）に他ならなかった。しかし不参加の理由は前述の通り。またUAE代表のオマル・アブドゥルラフマン（アル・アイン）、スロバキア代表のマレク・ハムシク（ナポリ）も怪我が理由で来ていないと顔見知りのタイメディアから伝え聞いた。公式プログラムの表紙を飾る、招待３か国の看板選手がこぞって来泰しないという悲報を開催間際に聞かされることとなる。
 
　一方タイ代表は、海外組となるJリーガー３人（ティーラシン、ティーラトン、チャナティップ）と、ベルギー２部でプレーするキャプテンGK、カーウィンが凱旋帰国。だからこそ世界の猛者との共演に胸膨らませ落胆したのは筆者だけではなかったはずである。ただ救いもあった。４年前のワールドカップを日本代表監督として共に戦った日本国民にとっての戦友であり、アジアカップ2019のホスト国・UAE代表監督を務めているアルベルト・ザッケローニの元気な姿を見られたことだ。公式会見後の通路で、絞り出した日本語で優しく声を掛けてくれたことが落ちた心を和ませた。
 
　そんなどこか残念な空気が漂う試合前のラジャマンガラに、突如として華やかな歓声が飛び交う。AKB48の姉妹グループ「BNK48」がスタンドへ入ってきた瞬間である。つい先日、タイ代表公式サポーターに任命されたと発表されたばかり。初の公式応援参加がこのキングスカップとなっていた。
 
　同じく新デザインユニホームのお披露目とも相重なったのだが、“推しメン”の名前と“48”をプリントしたシャツを新調したファンの多さに度肝を抜かれる。なかでもグループキャプテン、チャープラン・アーリークン（写真）が断トツの一番人気。タイのスタジアムで日本文化の根強い人気の高さをさらに思い知ることとなった。