【指揮官コラム】三浦泰年の『情熱地泰』|石が降ってもサッカーはやるのだ!

カテゴリ:連載・コラム

サッカーダイジェストWeb編集部

2018年03月20日

少年時代、叔父さんに言われた言葉が時代に合わないと思われた矢先…。

J3リーグ2節のG大阪U-23戦では、鹿児島市内に灰が舞った。鴨池陸上競技場からもその様子が見て取れた。(C) SOCCER DIGEST

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 子どもの頃、監督に「今日の練習はありますか?」と雨の日に尋ねると、当然のようにこう返されたものだ。
「サッカーは石が降ろうが槍が降ろうがやるんだ!」
 
 そんな風にあり得ない例を挙げて突き放された僕たちは、雨の日であろうが、暑い日であろうが、疲れている日であろうが、野暮な質問をせずサッカーに打ち込んだ。
 
 そのサッカーは本当に楽しかった。
 
 何があっても、何が起きても言い訳できないサッカーの虜になった。答えのない、100点満点のない、何があっても行なわれるサッカーの魅力に、僕は50年近く魅了されている。
 
 しかし、こうしてサッカーと長年にわたって付き合ってみると、決して「石が降ろうが、槍が降ろうが」中止にならないとは限らないことが分かってきた。現役時代であれば、あまりにも強い雨によって、レフェリーの判断で試合を前半のうちに中止、延期試合になったことがあったし、監督時代には除去できないほどの大雪や、強風によって延期となったこともあった。
 
 そして、僕が監督になって初年度には、震災のため1か月のリーグ中断も経験した。
 
 僕たち兄弟にとって、監督でもあり叔父さんでもあり、育ての親のような存在であり、尊敬する人が、サッカー少年に言った一言 <石が降ろうが、槍が降ろうが…> それが今では中止になることはよくあり、言い訳をしない選手を育てるために、忘れもしないと誓った言葉が、「今の時代では通用しないのだな…」と思っていた矢先――。
 
 第2節が行なわれた鴨池に灰が舞った。
 
 灰とは、火山灰と噴石のことを指す。ある意味、子どもの頃に言われていたことが実際に起こり、『石が降っても(灰が降っても)』試合は行なわれたのである。
 
 桜島の噴火は、鹿児島の皆さんにとっては普通のことのように、僕には伝わっている。たくさんの人がいろんな想いをしているのであろうが、この地で桜島の噴火を悪く言う人はいない。
 
 ある意味、郷土愛なのであろう。桜島の噴火は、鹿児島のスピリットなのか!?
 
 鹿児島で生活するにあたって、必ず鹿児島の人はアドバイスする。火山灰、噴石、灰が降るから気をつけてねと……。
 
 昨年も数回、灰が降ったようだが僕は気づかなかった。そんな僕が今年はその灰に気づいた。明らかに空の色が違い、薄茶色、薄グレーで視界が違うと。車には灰が積もり、やっと僕も鹿児島人の仲間入り、と思ったら……。
 
 それは風向きによって新燃岳(しんもえだけ)の噴火が鹿児島市内にも影響した日であり、桜島の灰ではなかったのである。新燃岳は、宮崎県と鹿児島・霧島の境にある活火山で、噴火の影響が鹿児島市内まで来てもおかしくはない。
 
 ただ、初めて気づいた灰が宮崎の物だったとは……。僕は、まだまだ鹿児島人に程遠いのだろう。
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