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【現地発】バルサの“野生児”ミナの新たな挑戦。名将ペケルマンも「世界的なCBになれる」と期待

カテゴリ:メガクラブ

エル・パイス紙

2018年02月28日

同胞の先輩はSNSで「コロンビアの誇り」

23節のヘタフェ戦でリーガデビューを果たしたミナ。195センチの巨体を活かした空中戦の強さは、今後セットプレーの場面などでバルサの新たな武器になりそうだ。(C)Getty Images

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 果物を食べたくなったらスーパーマーケットで購入するのではなく、木からそのまま摘み取る。水遊びをしたくなったら近所のプールまで出かけずに、その辺の川岸に降りる。そんな贅沢さとは無縁の田舎町で生まれ育った人間が、故郷に抱く愛情というのは特別なものがある。ジェリー・ミナの出身地、コロンビアのグアチェネも住民の多くがサトウキビの栽培に従事する小さな町だった。

 そんな野生的な暮らしをしてきたミナが、バルサの選手の中でもっとも長身(195センチ)で、おそらくもっとも大きく幅の広い足をしているのは偶然ではないのかもしれない。現在使用しているのも特注のスパイクで、昨年9月に左足第5中足骨骨折からの復帰に向けたリハビリを行なっている最中に、足のサイズを測定するため、長時間のフライトを経てアディダスの本社があるドイツのニュルンベルクまで出向いている。

「あなたがたが足の裏で踏む所は、ことごとくあなたがたのものとなる」という旧約聖書の詩篇にある通りに、最初に訪れたスタジアムの芝生を裸足で踏みしめる習慣があるのは、郷土愛が強く信心深いいかにも彼らしいエピソードだ。

 GKだった父親と、叔父のジャイア・ミナによる親身なサポートに支えられてキャリアを積み重ねてきたミナは今年1月、パートナーのジェラルディーネ・モリーナとともにバルセロナに居を構え、新生活をスタートさせた。

 その際に、みずから協力を買って出たのが、他でもない地元コロンビア出身の世界的な人気歌手で、ジェラール・ピケの妻でもあるシャキーラだった。彼らがその時に覚えた深い感動を上回るものがあるとすれば、もちろんそれは、ミナがバルサのユニホームをまとってカンプ・ノウのピッチに立った瞬間であろう。

 
 デポルティボ・パスト(コロンビア)でミナをプロデビューさせたのが、当時のホセ・フラビオ・トーレス監督だ。20歳までボランチだったミナをCBへコンバーした当時の決断について、彼はこう振り返る。

「わたしも現役時代ボランチだった。ジェリーにはスモールスペースをこじ開けるだけのアジリティーが不足していた。その点、センターバックだと視野が広がり、彼の長所である高さも活きると考えたんだ」

 トーレスは、ミナにはモダンCBに不可欠な攻撃力が備わっていると明言する。

「わたしはセンターバックの選手に高いビルドアップ能力を求める。その点、ミナは相手のプレスに動じることなく、前線にボールを供給することができる」

 さらに1年半在籍したパルメイラス(ブラジル)では、公式戦49試合に出場して9ゴールをマーク。「最近はゴールに向かう姿勢が増し、ラストパスも積極的に狙っている」と成長ぶりに目を細める。

 コロンビア代表監督のホセ・ペケルマンも、「世界的なセンターバックになれる可能性を秘めた有望株」と、ミナのポテンシャルを高く評価している。2014年のブラジル・ワールドカップ後に、世代交代に踏み切るチームに抜擢した若手のひとりがミナだった。

 ミナはロシア・ワールドカップ南米予選のウルグアイ戦(10節)で、得意のヘディングで同点ゴールを挙げるなど母国の予選突破に貢献。指揮官の期待に応えてみせた。

 もっとも、バルサで確固たる地位を確立するには、当面はそうした攻撃面のアピールを控え、まずはCBとしての本分である守備面でチームに貢献する必要がある。ましてやミナは、コロンビアやブラジルのスピーディーな展開のサッカーに慣れ親しんできた。恩師トーレスもバルサのプレースタイルとの小さくない違いを指摘する。

「ハイプレス戦術を採用するバルサでは、DFラインの位置も極端に高く、センターバックがハーフウェーライン付近まで上がり、背後に40メートルのスペースが広がっているケースも珍しくない。それは、ジェリーにとって経験したことのない戦い方であり、適応にはやや苦労するかもしれない」

 そんなミナにとって心強いのが、同胞の選手たちからの励ましだ。

 スペイン2部のグラナダに所属するアドリアン・ラモスは、ミナに会いにバルセロナを訪問した後、「コロンビアの誇りだ」とソーシャルメディアに投稿。また、故郷のグアチェネにほど近い町出身のクリスティアン・サパタ(ミラン)は、「ジェリーが自身のルーツを忘れることはない。なぜならそこは、彼にとってサッカーキャリアの原点だからだ」とコメントし、「素晴らしいサッカーと得意のダンスでカンプ・ノウの観客の心を躍らせるんだ!」とリクエストした。

 まさしくコロンビア中の大きな期待を背負うミナの、新たな挑戦が始まった。


文●ナディア・トロンチョニ記者(エル・パイス紙)
翻訳:下村正幸
※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙の記事を翻訳配信しています。
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