【番記者通信】11年で7度目のCL4強。原点は10年前のあの敗北|チェルシー

カテゴリ:メガクラブ

ダン・レビーン

2014年04月12日

シーズンはここからが本番だ。

タフで勝負強いチェルシーが形作られた原点は――。 (C) Getty Images

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 ちょうど10年前の今頃だ。チェルシーはクラブ史上初めてチャンピオンズ・リーグ(CL)のベスト4進出を決めた。10年後の2014年4月、パリ・サンジェルマンを大逆転で下し、準決勝に勝ち上がった。通算7度目のベスト4だ。11年間で7度はちょっとした快挙だろう。

 10年前、クラウディオ・ラニエリの指揮下で対戦したモナコとの準決勝は、私がジャーナリストとして初めてリポートした試合でもある。それから5回のセミファイナルをすべて取材している。対戦相手を全部覚えているか? もちろんだ。実は造作もない。2チームとしか当たっていないからだ。バルセロナが二度、リバプールが三度だ。

 いま改めて振り返れば、10年前のあのモナコ戦は、いまのチェルシーの原点とも呼べる試合だった。

 敗北で決定的になったのが、ラニエリ監督の解任だ。不可解な戦術と選手交代がモナコ戦の敗因だったというのが、私を含めた大半の見解だ。オーナーになって1年目のロマン・アブラモビッチもそう判断し、イタリア人指揮官に三下り半を突き付けた。そして後任に迎えたのが、そうジョゼ・モウリーニョだ。チェルシーを破ったモナコを破ってCLを制覇したポルトの指揮官を、すかさず引き抜いたのである。

 試合後のロッカールームでは、それぞれがそれぞれのやり方で敗北と向き合っていた。スコット・パーカー(現フルアム)は、怒りにまかせて叫び散らした。ジョン・テリーは、タオルで頭をすっぽり覆い、長い時間うなだれていた。

 対照的な振る舞いが印象に残るこの2人は、奇しくも好対照のキャリアを描いていくこととなる。一方はワールドクラスのCBに成長し、チェルシーとイングランド代表の最終ラインに君臨。もう一方は、並のレベルのMFとしてクラブを転々とした。

 ラニエリを解任したアブラモビッチは、地中海に浮かべた超豪華ヨットにモウリーニョを招待した。その場には、テリーとフランク・ランパードの姿もあった。チームを託そうと決めたモウリーニョに、アブラモビッチは熱く語った。「モナコ戦のような失態はあってはならない。勝者のメンタリティーを持ち、最後の最後まで戦い抜かなければならない」と。テリーとランパードの心にも、その言葉は強く響いた。

 タフで勝負強いチェルシーは、10年前のモナコ戦から形作られていったのだ。4月になって、またCL準決勝を戦う。シーズンはここからが本番だ。

【記者】
Dan LEVENE|Fulham Chronicle
ダン・レビーン/フルアム・クロニクル
チェルシーのお膝元、ロンドン・フルアム地区で編集・発行されている正真正銘の地元紙『フルアム・クロニクル』のチェルシー番。親子三代に渡る熱狂的なチェルシーファンという筋金入りで、厳しさのなかにも愛ある筆致が好評だ。

【翻訳】
松澤浩三
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