主将を務める技巧派アタッカー滝裕太(3年)と高い得点能力を持つ平墳迅(3年)の2トップに、勝負強さが売りの鈴木魁人(3年)とドリブルで局面を打破する新開成弥(3年)の両サイドハーフ。彼らが自由自在にポジションを変えながらチームアタックを牽引している。前半戦(9節終了)を終えたプレミアリーグEASTで、リーグ最多の20得点を記録。首位快走の原動力となっているのが、このカルテットだ。
なかでも7得点で得点王争いのトップに立つ平墳が、ひときわ異彩を放っている。
「ちょっと他とは違う」。
チームメイトの誰に訊いてもそんな答が帰ってくる。突出しているのはゴールへの執着心。左足から放つ強烈な一撃に加え、180センチ・77キロの体躯を活かしたポストプレーや献身的な守備も武器だ。
今季のプレミア開幕戦、FC東京U-18戦ではハーフウェイーライン付近から左足で豪快弾を突き刺し、点取り屋としての才能をまざまざと見せ付けた。7月16日の9節・柏レイソルU-18戦でも勝利に導く2ゴールを奪取。決定力の高さを存分に示している。
いまでこそ特大の輝きを放っている平墳だが、昨年までは全国的に無名の存在だった。
中学時代は杉本太郎(現・徳島ヴォルティス)などを輩出した岐阜VAMOSでプレー。県選抜に選出された経験もあったが、日の丸を背負う機会は訪れなかった。さらなる成長を期して、高校進学のタイミングでJの下部組織入団を望むも、その第1希望はセレクションで落選。なんとかふたつ目の清水ユースで合格を勝ち取ったが、当初は高いレベルの練習に戸惑うばかりで、付いていくのがやっとだったという。思うようなプレーがまるでできず、もがき苦しんだ。
「技術的にもみんな巧くて、自分がやっていけるのか本当に心配になった」
それでも平墳は挫けることなく、コツコツと地道な取り組みを積み重ねた。やがてその姿勢が実を結び、徐々に出場機会を得ていく。昨年は1年を通じてピッチに立ち続けた。
そして迎えた今季、「4つの初体験」が平墳のサッカー人生を劇的に変えるのだ。
