[J1リーグ9節]FC東京1-0広島/4月30日/味スタ
敵地に乗り込んだ広島は、CKから丸山祐市にJ1初ゴールを決められ、今季6敗目を喫した。結果的に「セットプレー一発に散った」とはいえ、攻撃に目を移せば、決定機は塩谷司のFK(42分)と工藤壮人のターンシュート(56分)の2回のみ。残念ながら、逆転劇を予感させるほどの迫力と精度はなかった。
そんな歯車が嚙み合わない広島は、11年間(2003~05、07~14)プレーした髙萩洋次郎の目にどのように映ったのか。「(課題を)修正されちゃうと困るんで(苦笑)」と言葉を選びつつも、2連覇(12~13年)に貢献したファンタジスタは古巣の印象について次のように語る。
「ひとつだけ言えるとしたら……、ボールをつなぐ部分で単純なミスが多い。あれだと相手に余裕を与えてしまうと思う」
髙萩によれば、FC東京はポジションを問わず「ボールホルダーを自由にさせないこと」を第一に考えてプレッシャーをかけていたという。もっとも、かつての広島であれば、十分にいなせていただろう。髙萩や佐藤寿人、石原直樹が前線でコンビを組んでいた時代のような“阿吽の呼吸”がないにしても、冷静かつ正確なビルドアップで隙を窺い、訪れたチャンスを効率よく仕留めるのが広島本来の姿だ。
しかし、現状はGKを含めた最後方で回すことはできても、ストッパーからウイングバックへの縦パスや、ボランチからの展開が上手くいかず、厚みのある攻撃が出せていない。髙萩も明言こそ避けたが、中盤の機能不全を感じたようだ。
「(問題は)最終ライン? いや、後ろ(3バック)は俺らにとっちゃ嫌じゃないですか、あのメンバー(塩谷司、千葉和彦、水本裕貴)は。もう少し連動性がないと。俺がやっていた時は楽しんでいた」
もちろん、青山敏弘や野上結貴らボランチだけの責任ではない。ウイングバックやシャドーのサポートは不可欠であり、最終ラインとの意思疎通も高める必要がある。百戦錬磨の森﨑和幸の復帰頼みとせず、既存メンバーで目の前の「壁」を乗り越え、巻き返しへの突破口を掴みたい。
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)