【浦和】亡き母の"遺言"を胸に、ラファエル・シルバは「何があっても、前に突き進む」

カテゴリ:Jリーグ

塚越 始(サッカーダイジェスト)

2017年02月10日

練習場に行くまでのバス代がない。しかし、それは決して悲しむことではなかった――。

 パスを受けたラファエル・シルバが躊躇わずドリブルを仕掛けて、ゴールへ突き進む。日本に来て2年半、ひと回り大きくなって強靭さの増した身体を生かしてDF陣を振り切り、シュートまで最短距離で持ち込む。
 
 新天地の浦和ではこれまでセンターフォワードに固定され、沖縄のアマチュアクラブとJ1に昇格した札幌から、計4試合・7ゴールを決めている。
 
「前を向いた時に、僕の持ち味のスピードを出せる。常に前を向けるシャドーが最も合っている気はする。でも新潟ではCFとして徐々に慣れていったから(4-4-2の2トップが主戦場だった)、浦和でも1トップを任されれば、新たな挑戦になるし、やり甲斐につながると思う」
 
 R・シルバはそのように前を向いたプレーへのこだわりについて話していた。
 
 まっすぐ突き進む――。そのプレースタイルに結びつく16歳での出来事について、彼はインタビューの席で語ってくれた。
 
 大都市サンパウロの街中で生まれ育ったR・シルバだが、幼少の頃、両親は離婚している。その後、母と姉との3人で暮らし、消防士だった父親からの仕送りが生活費となった。
 
「でも、まだ父は若くて消防士としての階級が低くて、その仕送りが滞ったりもした。だから母がテレホンオペレーターなどの仕事をして、生活費を賄っていた時期もあった」
 
 フットサルで数えきれないほどのゴールを決めた活躍が認められ、コリンチャンスの下部組織にスカウトされた。ただ、その練習場までに行くバス代さえなく、途方に暮れたこともあったと言う。
 
「生活費が底を尽きそうになったら、どのように使うのか、みんなで考えなければいけなかった。だから母に『僕のバス代を食費に使おう。そのほうがみんなで楽しめるから』と申し出るんだ。母はそういったなかで必死に家計を切り盛りしてくれていた。僕らを育てるために、母は戦ってくれていた。僕らを守ってくれる最強であり、最も優しい掛け替えのない人だ」
 
 バス代がないことが、決して悲しいわけではない。むしろ、そんな些細なことによって、家族が傍にいることを実感できるのは幸せなことでもあった。そして彼は、「ただ……このことについて、もう少し説明させてもらっていいかな」と切り出した。
 

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