36分、後方からのフィードに合わせてペナルティーエリアに走り込み、ゴールに背を向けた状態で胸のトラップでボールを浮かす。２人のDFに囲まれながらも、その瞬間、ふわりと舞い上がると空中で身体をねじり、華麗に右足を振り抜いた。
 
　エールディビジ３節のフローニンヘン戦で決めたのは、サッカーセンスが凝縮したジャンピングボレー。この試合でハットトリックも達成したトゥベンテの若きストライカーは、まさに獅子奮迅の活躍でチームの４-３の勝利に大きく貢献した。
 
　エネス・ウナル、19歳。すでにトルコ代表で３キャップを刻む神童が今シーズン、オランダの地でその才能を爆発させている。９節を終えたエールディビジでの成績は、７試合に出場して７得点・１アシスト。驚異的なペースでゴールを量産し、フェイエノールトのニコライ・ヨルゲンセンと並んで得点王争いのトップを走っているのだ。
 
　際立っているのは、フィニッシュワークの多彩さ。DFラインの裏に抜け出して、あるいはサイドからのクロスにタイミング良く走り込み、ヘッドやボレー、ワントラップから素早く振り抜いてネットを揺らす。また、直接狙うＦＫのクオリティーも高く、今シーズンはすでに１ゴールを決めている。
 
　エネスのパスを所有するのは、マンチェスター・シティ。15年７月に300万ユーロ（３億6000万円）の移籍金で買い取られた後、ベルギーのヘンク、オランダのNACと武者修行のレンタルを繰り返し、16年冬に渡った３クラブ目のトゥベンテでついにその才能を本格的に開花させようとしているのだ。
 
　トゥベンテとのレンタル契約は、17年６月まで。興味深いのは、その後のエネスのキャリアだろう。
 
　所属元であるシティの前線には、絶対的エースのセルヒオ・アグエロが君臨し、その後継者候補として逸材ケレチ・イヘアナチョ（20歳）がめきめきと頭角を現わしている。さらに来年１月には、ブラジル代表のレギュラーに定着しつつあるガブリエウ・ジェズス（19歳）が加入する予定だ。
 
　ここにエネスが加われば、熾烈を極めるのが各国の“超新星”による２番手争い。エールディビジ得点王のタイトルでも引っ提げて戻ってくるようなら、アグエロの後継者候補としてエネスの注目度はさらにアップする。
 
　ジョゼップ・グアルディオラ監督にとっては、嬉しい悲鳴だろう。