チームは敵地でレギア・ワルシャワを6-0で下し、最高のスタートを切った。しかし、負傷明けの香川に、出場機会が訪れることはなかった。
この欠場は、大事を取っての判断だと言えるだろう。遠征に帯同した香川だが、負傷した右足の状態が完璧ではないことをトゥヘル監督に伝えていた。さらに、チームが20分までに3点のリードを奪ったことで、香川が無理に出場して怪我を再発させるリスクを冒す必要もなくなった。
香川自身、「もちろん出たい気持ちは常々ありますけど、無理をするところではない」と納得している様子だった。
ただ、この試合では香川とポジションを争うライバルたちが、次々と結果を残してアピールを果たした。
序盤の7分には、4-1-4-1のインサイドハーフに入ったゲッツェがヘディングでネットを揺らして先制点を挙げると、15分、同じくインサイドハーフに入ったゲレイロがFKからパパスタソプーロスの追加点をアシストする。
後半に入ると、51分にゲレイロがこぼれ球を左足で流し込み、76分には途中出場のカストロもゴールを決めた。
レギア・ワルシャワは、守備時に両ウイングが中盤に落ちる4-5-1のかたちでドルトムントの攻撃に対応したが、重心が下がったためにボールホルダーへプレッシャーをかけられず、ドルトムントのボールの出どころが高くなったことで、かえってゲッツェとゲレイロを自由にさせてしまった。
とりわけゲレイロは、ボランチとCBのあいだで次々とボールを引き出し、攻撃をスピードアップさせた。ヴァイグルからのパスが16本を数え、全体で2番目に多い本数だったことからも、いかに彼が最終ラインの組み立てから前線へボールを繋ぐ上で重要な役割を果たしていたかが分かる。
ゲッツェも、先週末のRBライプツィヒ戦よりはチームにフィットし、数多くのプレーに絡んでみせた。ここからコンディションが上がっていけば、かつてのようなプレーを取り戻す日もそう遠くないだろう。
ただ、だからといって香川が出遅れたということでもない。状態が完璧でないと分かっていてもチームに帯同させてベンチメンバーに入れたということは、それでも場合によっては起用したいとトゥヘル監督が考えていたということだ。
相手の力不足もあって予想外の大勝となったが、2節で早くも敗戦を喫したリーグ戦では、再び気持ちを入れ替えて戦わなければならない。
トゥヘル監督はまだ、最適な組み合わせを模索している最中のようで、10月の代表ウィークまで週2試合ペースが続くことを考えても、まだ様々な組み合わせを試すことは十分考えられる。
「まずはしっかりとコンディションを整えて、そういう不安がない状況でしっかりと練習と試合に臨めるように。まだ始まったばかりなので、チャンスは必ず来ると思うし、しっかりと準備してまたやろうと思います」
そう言い残して、香川は帰りのバスへと乗り込んでいった。
現地取材・文:山口 裕平
