いかに2人の存在が大きいかが悪い意味で証明される一戦に…。
準決勝のフランス戦までドイツの失点はわずかに1。世界最高のGKとされるノイアーの前で堅守を支えてきたボアテングとフンメルスのコンビは、今大会屈指の安定感を誇っていた。
フランス戦では累積警告で出場停止のフンメルス。抜群の読みと1対1の強さで相手の攻撃を無力化する彼の守備力は絶大なものだが、守ることに関しては、この日、ボアテングの隣でスタメン出場したヘーベデスも高い能力を持っている。
1対1に強いだけではなく、守備における状況対応が速い選手だ。例えば42分、ハーフウェーラインから独走したジルーに猛ダッシュで追い付き、ここしかないというタイミングのタックルでシュートブロックしたのは見事なプレーだった。
だが、フンメルスの強みは守備だけではない。鋭いサイドチェンジやアウトサイドで裏のスペースに送る好フィードは、ドイツの攻撃に厚みをもたらす大事な武器だった。
さすがに、ヘーベデスにそこまで求めるのは酷。そこで、ドイツはその穴を埋めるべく、ボアテング、ヘーベデスのCBの前に、キャプテンのシュバインシュタイガーをアンカーに入れる布陣で臨んだ。
フランスの攻撃の要であるグリエーズマンを抑えながら、ビルドアップの局面でボールの出口を作り、低い位置からの展開力を保とうとした。
実際、前半のドイツは、序盤を除けば、ある程度狙い通りの戦いができていたと思われる。不用意なハンドによるPKで失点したのは確かに痛かったが、まだ挽回できる時間は残されていた。
だが、ボアテングまで離脱となるとさすがに厳しい。交代で入ったムスタフィも身体能力の高い好選手ではあるが、リーダーとして守備陣をまとめ上げていたボアテングの代わりを務めることはできない。
事実、ボアテングの途中交代後、ドイツの4バックは安定感をなくしてしまった。フランスの2点目は、そんなドイツ守備陣の乱れから生まれたものだ。
パスの出しどころをなくしたヘーベデスからのパスを、自陣ペナルティエリア内で受けたキンミッヒがポグバにボールを奪取されると、慌てて寄せたムスタフィはポグバの鋭いフェイントであっさりとかわされ、センタリングを許してしまう。
さらに悪いことに、守備陣の狼狽はGKノイアーにまで伝染してしまったようだ。クリアミスからグリエーズマンに左足で流し込まれ、さらに厳しい状況へと追い込まれた。
終盤猛攻を仕掛けたドイツだが、守備を強化するフランスの壁を崩すことができない。こうした展開ではセットプレーが重要なカギを握るが、ここでもフンメルス、ボアテングの不在の影響が出てしまう。彼らなしの空中戦では、どうしても迫力が足らないからだ。
フンメルスがいれば、最初から違った戦い方ができただろうし、ボアテングがいなくならなければ、レーブ監督にも別の交代カードの切り方があったかもしれない。
無双とさえ思われたふたりの存在感は、あまりに大きくなり過ぎていたようだ。この試合では、どれだけ彼らが欠かせない存在だったかが如実に分かる試合展開となってしまった。
現地取材・文:中野 吉之伴
フランス戦では累積警告で出場停止のフンメルス。抜群の読みと1対1の強さで相手の攻撃を無力化する彼の守備力は絶大なものだが、守ることに関しては、この日、ボアテングの隣でスタメン出場したヘーベデスも高い能力を持っている。
1対1に強いだけではなく、守備における状況対応が速い選手だ。例えば42分、ハーフウェーラインから独走したジルーに猛ダッシュで追い付き、ここしかないというタイミングのタックルでシュートブロックしたのは見事なプレーだった。
だが、フンメルスの強みは守備だけではない。鋭いサイドチェンジやアウトサイドで裏のスペースに送る好フィードは、ドイツの攻撃に厚みをもたらす大事な武器だった。
さすがに、ヘーベデスにそこまで求めるのは酷。そこで、ドイツはその穴を埋めるべく、ボアテング、ヘーベデスのCBの前に、キャプテンのシュバインシュタイガーをアンカーに入れる布陣で臨んだ。
フランスの攻撃の要であるグリエーズマンを抑えながら、ビルドアップの局面でボールの出口を作り、低い位置からの展開力を保とうとした。
実際、前半のドイツは、序盤を除けば、ある程度狙い通りの戦いができていたと思われる。不用意なハンドによるPKで失点したのは確かに痛かったが、まだ挽回できる時間は残されていた。
だが、ボアテングまで離脱となるとさすがに厳しい。交代で入ったムスタフィも身体能力の高い好選手ではあるが、リーダーとして守備陣をまとめ上げていたボアテングの代わりを務めることはできない。
事実、ボアテングの途中交代後、ドイツの4バックは安定感をなくしてしまった。フランスの2点目は、そんなドイツ守備陣の乱れから生まれたものだ。
パスの出しどころをなくしたヘーベデスからのパスを、自陣ペナルティエリア内で受けたキンミッヒがポグバにボールを奪取されると、慌てて寄せたムスタフィはポグバの鋭いフェイントであっさりとかわされ、センタリングを許してしまう。
さらに悪いことに、守備陣の狼狽はGKノイアーにまで伝染してしまったようだ。クリアミスからグリエーズマンに左足で流し込まれ、さらに厳しい状況へと追い込まれた。
終盤猛攻を仕掛けたドイツだが、守備を強化するフランスの壁を崩すことができない。こうした展開ではセットプレーが重要なカギを握るが、ここでもフンメルス、ボアテングの不在の影響が出てしまう。彼らなしの空中戦では、どうしても迫力が足らないからだ。
フンメルスがいれば、最初から違った戦い方ができただろうし、ボアテングがいなくならなければ、レーブ監督にも別の交代カードの切り方があったかもしれない。
無双とさえ思われたふたりの存在感は、あまりに大きくなり過ぎていたようだ。この試合では、どれだけ彼らが欠かせない存在だったかが如実に分かる試合展開となってしまった。
現地取材・文:中野 吉之伴