「時々、人々はラミネが17歳であることを忘れている」

　カンプ・ノウの最高幹部のオフィスから発せられた言葉だ。インテルとのチャンピオンズリーグ（CL）準決勝第１レグを翌日に控えた４月30日、ラミネ・ヤマルがバルセロナの練習場『シウタ・エスポルティバ・ジョアン・ガンペール』の記者会見場デビューを果たした。

　まず目を引いたのは驚くほどの落ち着きようだ。その胆力を示すのに「メッシと比較する声にどのように向き合っていますか？」「メッシはインテル相手に得点を決めることができませんでした」といったリオネル・メッシとの比較に関する質問を優雅にかわすだけで事足りた。

「誰かと比べたいとは思わない。ましてやレオと比べるなんてね。彼はサッカー史上最高の選手だ」
「大半のチーム相手に得点を決めるなか、たまたまインテルが免れただけだ」

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　ただそんなヤマルの独壇場と化した記者会見で、親しい関係者は、失言と取られかねない回答が１つあったと指摘する。

「僕が傲慢だと言う人たちに言いたい。勝っている間は誰も何も言えない」という発言がそれに該当するが、しかし前述した通りバルサのオフィスからは、「あなたたちは普段の態度からラミネを大人と考えているが、彼はまだ子供だ。ピッチ上で見せる成熟度やプレッシャーとの向き合い方に驚かされるのは理解できるが、まだ18歳になっていないことを忘れないでほしい」と擁護する声が上がる。

　さらには、スポーツ部門から「17歳の少年が多少の傲慢さを持つのは普通のことだ」と同調する意見が出れば、チームメイトの１人は「特別な個性の持ち主」と評し、前出の親しい関係者は「時々、自分をさらけ出しすぎないほうがいいとアドバイスしている」と明かす。それぞれ意見は分かれるが、皆が口を揃えるのは「肝っ玉が据わっている」点だ。

近年ますます希少価値が増しているストリート育ちであることもそうしたヤマルの性格に関係している。ルールや戦術に支配されない場でボールを蹴りながら大胆さ、狡猾さ、勇気を培った。

　記者会見でも「CLの準決勝でプレーする怖さ」について尋ねられると「僕が持っているのはプレーするモチベーションだけだ」と即答した。