【EURO 今日は何の日】6月29日「イタリアが披露した“守備のファンタジー”(00年)」

カテゴリ:連載・コラム

サッカーダイジェストWeb編集部

2016年06月29日

数的不利、2度のPK判定にも屈することなく、PK戦で勝利。

多彩な攻撃を誇るオランダを封じたイタリアの守備。その原動力となったのは、最大のピンチを防いだ守護神トルドだった。 (C) Getty Images

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 EURO2000。イタリアの戦前の評価は高くなかった。クリスティアン・ヴィエリの得点能力だけが頼みの魅力に乏しいサッカーを続けた挙句に、大会直前になってそのヴィエリが負傷により、欠場となってしまったのだ。
 
 追い詰められたディノ・ゾフ監督は、当時ウディネーゼに所属していたステーファノ・フィオーレに全てを賭けた。すると、同年2月に代表デビューしたばかりの25歳のMFは、攻撃では司令塔として機能し、守備でも抜群の貢献を果たしたのである。
 
 これにより、懸案だった中盤が充実したイタリアは、みるみるチーム力を上げ、グループステージではトルコ、開催国ベルギー、そしてスウェーデンを好内容のサッカーで撃破。見事に首位通過を果たした。
 
 そして決勝トーナメントでは、準々決勝でルーマニアと対戦し、フランチェスコ・トッティとフィリッポ・インザーゴのゴールで危なげなく2-0の勝利を収めて、準決勝へ駒を進めた。
 
 6月29日、アムステルダム・アレナで彼らが対峙したのは、地元オランダ。グループステージでは3戦全勝を果たし、準々決勝ではユーゴスラビア相手に6-1の大勝を飾った、大会でも屈指の強大なチームである。
 
 開催国有利の予想通り、序盤からオランダが圧倒的な攻撃力をもって襲い掛かる。イタリアは相手の速く、分厚い攻撃に押し込まれ、全員守備によって何とかはね返すのが精一杯だった。
 
 そんななか、34分にDFジャンルカ・ザンブロッタが2度目の警告で退場を命じられる。数的不利まで強いられた彼らは、その4分後、さらなる災難に見舞われた。オランダにPKが与えられたのだ。
 
 もし、これが決まっていれば、イタリアは崩れ、オランダが2試合連続の大差勝利を飾っていたかもしれない。しかし、ここでイタリア守護神、フランチェスコ・トルドに神が宿る。フランク・デブールのキックを読んで、ストップしたのだ。
 
 これで、何かが変わった。試合は相変わらず、オランダが一方的に攻める展開だが、イタリアの守備は時間とともに安定感と堅固さを増し、相手の怒涛のラッシュをかわし続ける。
 
 それが、オランダに焦りを与えたのだろうか。61分に再びPKを得るも、今度はパトリック・クライファートがゴールポストにボールを当ててしまった。
 
 またもやピンチを脱したイタリアには、精神的な余裕も生まれ始め、ただ守るだけでなく、アレッサンドロ・デル・ピエロを起点にして効果的なカウンターを仕掛けられるようにもなった。
 
 これぞ「カテナチオ」! 伝家の宝刀を抜いたイタリアは120分間を守り切り、PK戦に持ち込んだ。
 
 オランダは、スタンドを埋めた大観衆からのプレッシャー、そして目の前に立ちはだかるトルドの凄みに屈した。1番手のF・デブール、続くヤープ・スタムが失敗。イタリアが4番手のパオロ・マルディーニが失敗するも、その直後にポール・ボスフェルトが外し、万事休した。
 
 オランダの強力な攻撃を弾き返したイタリアの“魂のディフェンス”。ゾフ監督は「我々は守備的なサッカーを志してはいない。状況に応じて最適な戦術を選択したまでだ」と語るが、窮地に立たされた場面で、伝統が我が身を救ったのである。
 
「守備のファンタジー」を披露したイタリアは、開催国を押しのけてフランスが待ち受ける決戦の地、ロッテルダムに向かった。その先に待っているのは、ハッピーエンドではなかったが……。
 
◎6月29日に行なわれた過去のEUROの試合
◇2000年ベルギー・オランダ大会
準決勝
イタリア 0(3PK1)0 オランダ
 
◇2008年オーストリア・スイス大会
決勝
スペイン 1-ドイツ
 
※日付は全て現地時間

本文では触れていないが、2008年のこの日は、スペインがフェルナンド・トーレスの一撃によってドイツを下し、44年ぶり2回目の優勝を飾った。“産みの苦しみ”をついに乗り越えた「無敵艦隊」は、ここからサッカー史に残る黄金時代に入り、世界制覇、そして初のEURO連覇を果たした。 (C) Getty Images

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