スパルタに所属する三戸舜介が「サッカー人生で一番難しい」と苦しい胸の内を吐露したのは、昨年12月８日、NAC戦の後だった。開幕のヘラクレス戦（０－０）こそ70分間プレーしたが、その後のリーグ戦では途中出場が続き、NAC戦では出場機会すらなかった。

　０－２でビハインドを負った展開のなか、どんどんベンチは攻撃のカードを切っていく。それでもマウリス・スタイン監督から三戸に声がかかることはなかったのだ。

　しかし、すぐに三戸はチーム内での序列を上げることに成功した。12月15日のNEC戦を３日後に控えた戦術練習で、三戸はレギュラー組に入ったのだ。

「あれ？ チャンスが来たな」

　週末の試合で自分が抜擢される手応えを掴んだ。そして今、三戸は公式戦で５試合続けてスタメンに名を連ねている。

「監督から『練習の強度をもっと上げてくれ』と言われていた。（NAC戦からNEC戦までの１週間で）何かがガラッと変わったわけではないけれど、自分は監督から言われたことをしっかりやって、練習試合でも強度の高いプレーを続けていた。

　そこを見てくれていたので、監督が使ってくれていると思ってます。このチームがやりたいことを意識しながら、自分の持ち味を出そうとしています。ここ何試合、自分はやるべきことをやっているだけです」
 

　コントローラータイプのペレ・クレメント、ストライカータイプのチャールズ＝アンドレアス・ブリム（現アルメレ・シティ）、そしてドリブラーの三戸など、これまでスパルタはタイプの異なる選手を左ウイングに置いてきた。その仕組の中で、スパルタの左ウイングとして三戸に求められることとは何だろうか？

「オン・ザ・ボールの時（ボールを持っている時）は、そこまで言われない。オランダのウインガーはやっぱり１対１のところにこだわっている。どのチームもそうだと思うんですが、『ボールを持った時は自分の特長を出してガンガン行け』と言われますね。

　だからオフ・ザ・ボールの時の方が言われます。たとえばサイドバックが上がってきたら、ウイングは中に入るとか、守備の時は前からガンガン行って相手のセンターバックのところまで行くとか、そういう『チームの形』のところですね」

　ウインガーのタイプが異なっても、オフ・ザ・ボールのタスクは変わらない。そこの実行度が高まったからこそ、三戸の出番が増えているのだろう。

　そんな彼をオン・ザ・ボールで後方射撃するのが、元オランダ代表のパトリック・ファン・アーンホルトだ。昨夏ガラタサライを退団した34歳のベテランCBは、昨年11月からスパルタでプレーしている。

「彼の後押しがあります。ベテランですし、経験がある分、コーチングなどが的確です。やっぱり安心感がありますね。ガンガン自分で行くというより、僕に渡して『行ってくれ』というのがある。

『お前は俊敏性があるんだから、ボールを取られてもいいから、１対１のシーンになったら全部行け。お前が取られたら俺が取り返す』と言われているんです。経験のある選手から、そう言われると自信になります。だから僕は伸び伸びとやれてます。自分はその期待に応えないといけない」

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