一部の選手は開幕前の会見で「(この大会は)昨年のリベンジではない」と話しているものの、主力メンバーの大半は一昨年前のブラジル・ワールドカップからの生き残り組である。
あの時も決勝で惜敗したハビエル・マスチェラーノは、昨年のコパで優勝を逃した直後に「2年続けて決勝で負けるなんて、もしかしたら原因は自分にあるのかもしれない」という強烈な自責の念を吐き出していた。
本来なら次のW杯まで待たなければならない雪辱のチャンスが、ここで早くも訪れたことになる。
アルゼンチンが今大会で優勝すれば、選手たちの心の奥底にこびりついたトラウマが一掃されることは間違いない。
その目標達成の鍵となるのがリオネル・メッシだ。
彼は開催国アメリカの『スポーツ・イラストレーテッド』誌に掲載されたインタビューのなかで、「(コパの初戦となる)サンタクララでのチリ戦は昨年のリベンジになる」と、はっきり語っている。
そして、「あの決勝で負けたことは苦い思い出。アルゼンチン代表は1993年(コパ・アメリカ連覇)以来、重要な大会で優勝していないから、ここで不運を終わらせることはとても重要だと思う。もちろん、簡単なことではないけれど」と付け加えた。
自身が参加した大会だけでなく、母国のA代表がこれまで23年ものあいだ、ビッグタイトルを手にしていない状況を変えたいという願望と責任感を示している。
アルゼンチン代表のキャプテンとして高い目標を掲げるメッシだが、残念ながら万全なコンディションにあるとは言えない。
5月22日にコパ・デル・レイ決勝(セビージャに延長戦で勝利)で120分間プレーした後、24日にアルゼンチンに飛んで翌日到着。27日には地方都市サンフアンで行なわれたホンジュラスとの親善試合に出場するも、背中の痛みを訴えて後半の途中で交代した。
その翌朝は故郷ロサリオに移動して家族に会い、31日には父ホルヘとバルセロナへ舞い戻っている。
6月2日に脱税の件で裁判所に出廷した時のメッシは、明らかに疲れた表情を見せていた。
スペインのメディア『カデナ・コペ』によると、司法当局は背中の痛みを配慮し、アルゼンチンに留まったままスカイプによる審問も可能であることを告げたというが、メッシは誠意を見せるために出廷することを選んだという。
立て続けの移動の上、丸1週間トレーニングをしていない身体で最高のパフォーマンスを期待するのは酷だろう。
しかし、コパ出場に向けてメッシ自身は意欲満々だ。「一刻も早く代表チームに合流したい」との意思から、裁判所の判定が下される当日の夜には、実費で手配したチャーター便でアメリカに向かうことになっている。
メッシをよく知るアルゼンチンのメディア関係者も、「代表の気の知れた仲間たちと過ごす時間が多いほど、コンディションも良くなるはず」と話す。
果たして、メッシ・キャプテン率いるアルゼンチンは23年ぶりの悲願を達成し、2度の決勝で敗れ去ったトラウマから解放されるだろうか。この記念すべき大会で、FIFAランキング1位のプライドを見せてもらいたいものである。
文:チヅル・デ・ガルシア
◇アルゼンチン代表のグループステージ日程
6月6日(日本時間7日11時)vsチリ(サンタクララ)
6月10日(11日10時30分シカゴ)vsパナマ(シカゴ)
6月14日(15日11時)vsボリビア(シアトル)
