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小学生時代の衝撃映像と電車のなかでの涙。誰も想像していなかった名古屋・稲垣祥がJ1通算300試合出場を果たすまで【インタビュー1】

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2024年09月12日

苦い記憶が9割の中学時代

笑顔が似合う稲垣。多くの経験をして今がある。(C)SOCCER DIGEST

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 約4か月半前、ひとつの記録がアウェー・埼玉の地で生まれていた。

 J1通算300試合出場達成。この大台に乗ったのは通算で137人目である。

 歴代1位の遠藤保仁(672試合)、2位の楢﨑正剛(631試合)といったレジェンドたちにはまだ遠く及ばない。

 それでも無名であった彼が日本体育大卒業後にプロ生活を11年も続けられ、偉大な記録を打ち立てるとは誰も想像していなかったに違いない。それだけに感慨深い。

「まず300試合に出られるとは、僕がプロになった当時、ほとんどの人が思っていなかったはずですよね。自分自身もそこまで積み上げられるとは考えてなかったですから」

 いまやボランチとして名古屋の顔となった稲垣祥はそう苦笑いを浮かべる。

 そしてこんなエピソードも笑い話として紹介してくれた。

「小学校の頃の僕のプレーを録画したDVDが実家に残っていて、この間、妻とふたりで見たんです。僕のなかでは当時から異彩を放っていた記憶だったんですが、実際は衝撃映像だった(笑)。笑っちゃうぐらい酷くて。『これでなんでプロになれたんだろう?』と妻も驚いていました。

 ポジションはトップ下だったと思うんですが、そもそも走り方がふにゃふにゃしていて、まったく上手そうに見えない(笑)。プロになるような選手って小学校の時から光るものを見せていたのかなと思っていたんですが、僕は違ったようですね」

 さらに中学時代には忘れられない日々を過ごした。FC東京の下部組織、FC東京U-15むさしへ入団したが、努力を続けても試合に絡めない苦境に立たされたのである。心優しい性格である。自分がサッカーをできるように家族がどれだけサポートしてくれているか理解していたからこそ、期待に応えられないもどかしさが募った。

「ここまでの歩みを振り返って辛かったのは絶対に中学時代ですね。ただ、その悔しさが僕の原動力、基礎になりました。あの挫折が、メンタル的な部分を含め、僕のサッカーキャリアを支えてくれました。

 やっぱり多感な時期に、そこまでのレベルに達していない、試合に出られない事実に直面すると、かなり苦しいんですよ。それこそ当時だってプロになりたいという夢も持っていたわけで、でも試合に絡めていないから、周囲から『厳しいよな』みたいに見られていると薄々感じちゃうわけですよ。『俺はプロにはなれないのか』と考えながら、練習に行っていました。本当苦い記憶が9割ですね。

 それこそ今でも覚えているんです。電車で1時間ぐらいかけて通っていましたが、なんかもう悔しさと悲しさと色んな感情が混ざって、電車のなかでひとりで泣いてしまったことがあって。周りの方に凄い心配してもらい、慰めてもらえたのを今でも鮮明に覚えています。本当、苦しい時期でしたね」
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 その後、帝京高、日本体育大と進み、「折れない心は相当強く太くなった」稲垣はプロになる夢を甲府で叶え、広島、名古屋と活躍の場を広げていった。ただ、大きな注目を集めていたわけではない彼が、なぜJ1でこれだけの試合数を積めたのか。

「そうですよね」。必ず聞かれる質問だと、稲垣も待ち構えていたのだろう。そして本人も答えを探しているようだった。頭を整理するように、言葉を紡ぐ。

「分析してみると色んな要素があるとは思うんです。まず運が良かった。運にも色んな要素がありますが、その場その場で、指導者の方に恵まれました。これはプロになってからもそうですが、自分のことを大切に育ててくれる指導者の方と出会うことができたんです。

 そして家庭環境にも恵まれました。両親のサポートや姉、妹の存在など、そこって自分じゃコントロールできませんが、僕はすごく助けてもらえました。

 また名古屋に来てからずっと一緒に生活している妻のサポートにも本当に感謝しています。そういう面を含めて、良い環境にいることができたなと実感しています。そしてその環境にいられたことを、自分が成長するために、いい方向に持っていけたのではないかなとも。

 表現は難しく、運を掴む力じゃないですけど、目の前にあったものを、自分で少しずつ拾いながら、それを着実に力にしていくことはできたのかなとは思いますね。

 あとはやっぱり、逆境に立たされた時の粘り強さや、反骨心、折れない心などのメンタリティ。自分はそこでぐっと上がっていけたという印象はあります」
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