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「この一年は疲れましたね。早く歩きすぎです」部員8人からスタートした広島国際学院が35年をかけて掴んだ檜舞台と全国2勝【選手権】

カテゴリ:高校・ユース・その他

森田将義

2024年01月03日

勝負の年を前に敢行された“監督交代”

夏冬と初めて経験した全国の舞台。広島国際学院に「2023年度」は一大分岐点となった。写真:鈴木颯太朗

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[高校選手権3回戦]青森山田(青森) 7-0 広島国際学院(広島)/1月2日/駒場

 前半12分の先制点を皮切りに失点を重ね、終わってみれば0-7。スコアだけを見れば広島国際学院の完敗だが、初出場のチームが歩んできた今大会の勝ち上がりは称賛に値する。

「やっと日の目の当たるところに来た。人に見てもらえるところまで来ることができた」

 試合後、谷﨑元樹監督が感慨深げに話した通り、選手権にたどり着くまでの道のりは決して平坦ではなかった。

 1989年に現在の瀬越徹総監督が監督に就任した当初、部員8人からのスタートだった。「あの頃は、うちがこの舞台に立つなんて誰も思っていない。どこにも相手にされませんでしたから。それが僕とチームの『なにくそ』という想いになったのは確か」と、瀬越総監督は振り返る。

 公立志向の強い県民性もあって、選手が満足に集まらない。それでも、地道な努力を続けていくと徐々に県外の強豪試合との練習試合も増えていく。同時に学校の雰囲気が変わっていったこともチームの成長を後押しした。谷﨑監督はこう話す。

「学校の学力が上がっていくと同時に、サッカーに対する向き合い方が変わったと感じています。すごく真面目に取り組む。一つのことに対して投げやりにならない姿勢が見えるようになってきた」

 2019年度に校内のグラウンドが人工芝に替わったことも大きな転機で、県内の優秀な選手たちが広島国際学院を選ぶ理由が増え始めた。主将のDF茂田颯平(3年)、エースのFW野見明輝(3年)は当初、選手権優勝の経験を持つ県内屈指の強豪である広島皆実に一般受験で進学することを考えていたが、チームメイトがこぞって広島国際学院への入学を決めたため、心が傾いたという。

 そうして集まった今季の3年生たち。まさに勝負の年だ。彼らが最終学年を迎えるタイミングで、瀬越総監督は長年、コーチとして支えてきた谷崎監督に指揮官の座を受け渡した。瀬越総監督は、意図についてこう明かす。「この代は僕が見ていて一番強いと思っていた。弱い時に渡しても、元に戻そうとすることに力を注いでまったく良くならない。それなら、一番良い時に代わって、新しいスパイスを入れながら良くなっていけば良いと思った」

【厳選ショット】片渕竣介のPKストップで、優勝候補を撃破!“バモス・ジェアン・パトリッキ”コールが駒場の地に響き渡る!|選手権2回戦 広島国際学院1(4PK3)1静岡学園
 狙いが見事にハマり、夏のインターハイでは全国大会を初めて経験。勢いのまま冬の選手権にたどり着いた。そして、国立競技場で挑んだ開幕戦(早稲田実戦)で見事に初勝利。試合後、瀬越総監督が口にした言葉が印象的だった。

「35年間やってきたけど、ここに立つのが指導者の夢。ここに立てただけでも良かった。さらに勝って素晴らしい歴史を作ってくれました。選手たちの姿を見ていて、ウルウル来るものがありましたね」

 2回戦では優勝候補の一角だった静岡学園にPK戦で勝利。全国大会出場すらままならなかったチームは夏冬の全国大会出場と全国2勝を掴み、一気に歴史を動かした。「この一年は疲れましたね。早く歩きすぎです」と谷﨑監督は笑みを浮かべる。

 新たな景色を見たことで、チームの意識は“全国大会出場”から“全国大会での上位”に変わっていくのは間違いない。「常連校が常連校である理由が分かった気がします。また来たい。もう一回やってみたい」と谷﨑監督が話した通り、指導者もすでに先を見据えている。ようやく掴んだ全国大会の舞台はゴールではなく、スタートだ。これからm広島国際学院の新たな歴史が始まっていく。

取材・文●森田将義

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