2023年12月２日、国立競技場で開催された昇格プレーオフ決勝。いずれも“オリジナル10”の東京ヴェルディ、清水エスパルスの一方がJ１昇格を果たせる戦いでアドバンテージを得ているのは、レギュラーシーズンで３位の東京Vである。引き分けでもいい東京Vと、勝つ以外にJ１への道が開けない清水、そんな両チームがどんなスタンスで臨むのかも見どころとなる試合だった。

　VARが導入される昇格プレーオフ決勝で立ち上がりからアグレッシブなサッカーを展開したのは清水。素早い寄せで東京Vの足を止め、主にセットプレーからチャンスを作る。乾貴士が「鍵」と言っていた先制点を果敢に狙った。

　東京Vの城福浩監督が「世の中の人が見たらエスパルスさんはJ２にいちゃいけないチーム」と言うように、前半15分までの清水は個の部分で東京Vを凌駕しているように映った。

　ただ、東京Vは崩れない。城福監督の下で培った組織力を武器に清水の攻撃を阻止。相手のシュートミスに助けられる場面もあったが、焦れずに粘り強く対応した。

　スキルの高さを示した清水と、守備のツボをよくおさえていた東京V。両チームの色が出た前半戦だった。
 

　先制点がとにかく重い試合なので、後半に入るとピッチ上の緊張感が記者席にも伝わってくる感覚があった。そんな中、60分過ぎに東京Vの選手がエリア内でハンド。これで得たPKを清水が決めて先制と、些細なミスが試合を動かすことになった。

　その時間帯あたりから清水は４-２-３-１から５-４-１システムに変更して守備を固めた印象だった。これに対して攻め込む東京Vだが、なかなか突破口を見出せない。絶対的なストライカーの不在が最後の最後に響いたか、そう思っていた後半のアディショナルタイムにドラマが待っていた。

　90＋３分、東京VがPKを獲得したのである。これを染野が決めて同点。土壇場で東京Vは追いついた。

　オリジナル10の国立決戦で天国と地獄を分けたPK。  

　PKを与えた責任もあったのだろう、緊張から解き放たれた森田晃樹の涙に感動した。

取材・文●白鳥和洋（サッカーダイジェストTV編集長）


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