正真正銘のサプライズチーム!観客の心を掴むシュツットガルト【現地発】

カテゴリ:ワールド

ワールドサッカーダイジェスト編集部

2023年11月25日

意外な旋風を巻き起こす

指揮官はドイツサッカー界の新たな「ヘーネス」として話題沸騰中だ。(C)Getty Images

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 正真正銘のサプライズチームだろう。新たな“ヘーネス”に率いられたシュツットガルトがブンデスリーガ序盤戦における台風の目になっている。そのスタイルでも観客の心を掴んでいるチームの魅力に迫ろう。(文:ベンヤミン・ホフマン/訳:円賀貴子 2023年11月16日発売ワールドサッカーダイジェスト『ザ・ジャーナリスティック ドイツ』を転載)

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 ドイツ人に「ヘーネス」と訊ねれば、バイエルン・ミュンヘンで一時代を築いたゼネラルマネジャー(ウリ)か、往年の名ストライカー(ディーター)の話になる。これが少し前までの常識だった。いまは別のヘーネスが注目を集めている。VfBシュツットガルトを率いるゼバスティアン・ヘーネスだ。他ならぬディーターを父に持つ41歳の青年監督は今シーズン、あらゆる称賛に値する仕事をこなしている。

 シュツットガルトは過去2シーズン、土壇場で「死」を免れたチームだ。2021-2022シーズンは最終節の1FCケルン戦で終了間際に劇的な決勝点を挙げ、2部降格を回避した。続く2022-2023シーズンは2部3位、ハンブルガーSVとのプレーオフの末に辛うじて残留。そして迎えた今夏の移籍市場では財政難もあり、主将を務めていた遠藤航、最終ラインの柱だったコンスタンティノス・マブロパノス、名クロッサーのボルナ・ソサを泣く泣く売却せざるをえなかった。それにもかかわらず、今シーズンの彼らは9節終了時点のブンデスリーガで3位と躍進。意外な旋風を起こしている。

 なぜ生まれ変わったのか。まずは前々回のコラムで紹介したセル・ギラシーだ。加入2年目のこのギニア代表FWは、最初の8試合で14ゴールというリーグ新記録を樹立する決定力を披露。現在は太腿の怪我で離脱中だが、開幕8戦7勝という快進撃の原動力となった。彼が欠場した9節のTSGホッフェンハイム戦で、7試合ぶりの黒星を喫したのは偶然ではないだろう。

 もうひとり称えるべきはGKアレクサンダー・ニュベル。バイエルンからレンタルされたASモナコで正GKの経験(2シーズン)を積んだ27歳は、シュツットガルトの守備陣に欠けた安定感を植え付けただけではない。ボールプレーを重んじるヘーネスの戦術に不可欠な“フィールドプレーヤーのひとり”として輝きを放っている。

 適切な距離間を保ったトライアングルでショートパスを回し、相手のハイプレスをかわす。そのビルドアップ隊に組み込まれたニュベルは、足下の確かな技術を活かしながら十分に貢献している。もちろん、マヌエル・ノイアー級のクオリティーではないものの、攻守に安定感を欠いた前任者たち(フローリアン・ミュラーやファビアン・ブレドロウ)とは比較にならない実力を示している。勇敢な飛び出しも武器のひとつで、クロスやCKへの対応に関してはリーグでも三本の指に入るレベルだ。

 いまでこそ賛辞を贈っているが、メディアは昨シーズンまでシュツットガルトに辛辣だった。ヘーネスの前任者であるブルーノ・ラッバディアには「時代遅れ」のレッテルを貼った――実際、彼は公式戦12試合で2勝と限界を露呈――。そんな指揮官を招聘した首脳陣にも「血迷ったか」と容赦がなかった。いずれも的外れな指摘ではなく、とりわけラッバディアはスベン・ミスリンタート前SDの主導で作られた若手主体のチームとの相性が最悪だった。

 若手を困惑させた規律重視のラッバディアに対し、今年4月にバトンを引き継いだヘーネスは選手の自主性を重んじる指揮官だ。だからだろう。才能を持て余していたヤングタレントがいま、伸び伸びとプレーしている。その代表格がエンゾ・ミヨ。フランスU-21代表に名を連ねるMFは昨シーズンの最終節直前、タトゥーを増やしたことで厳しく叩かれた。

「残留が懸かった大一番だぞ。集中しているのか。プロとしてあるまじき行為だ」

 しかし、ヘーネスはミヨを咎めなかった。チームきってのテクニシャンがプレーオフでその恩に報い、それ以降も人が変わったかのようなハイパフォーマンスを見せているのは偶然だろうか。高いボールキープ力や鋭いスルーパスで違いを作り出すミヨを指弾しようとする者はもういない。

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