［J１第32節］湘南 ２－１ 名古屋／11月11日／レモンガススタジアム平塚

「久々に試合に出られて、幸せでした」

　勝利を告げる笛が鳴った瞬間、守護神は涙を流していた。

　湘南ベルマーレは11月11日、J１第32節で名古屋グランパスと対戦し、２－１で勝利した。

　この日、GKとしてスターティングメンバーに名を連ねたソン・ボムグンは、左足舟状骨疲労骨折の影響で、８月19日のガンバ大阪戦以来、約３か月ぶりの出場だった。

「正直、コンディションは100％ではない」（ソン・ボムグン）が、前節までゴールマウスを守った富居大樹が第２－４腰椎横突起骨折で離脱したこともあり、復帰が早まった形だ。

　名古屋戦でのソン・ボムグンのプレーは、状態が戻り切っていないことを感じさせない、素晴らしいものだった。15分に大橋祐紀が先制点を奪った直後の21分、相手のエース、キャスパー・ユンカーにボックス内でボールを収められ、１対１の局面になるも、鋭いシュートを落ち着いてセーブ。さらに26分と43分に際どいミドルシュートを受けるが、さすがの反応で防いだ。

　試合後、湘南の山口智監督が「ボムグンじゃなかったら...という場面もあった」と背番号１のパフォーマンスを称賛したように、前節の神戸戦でMOM級の活躍を見せた富居に引けを取らない出来で、チームの勝利に貢献した。
【PHOTO】負けられない戦いを選手たちと共に戦った湘南ベルマーレサポーター

　ソン・ボムグンは名古屋戦をこう振り返る。

「難しいボールもたくさん飛んできましたが、止められたことで自分の状態が上がっていっている感覚がありましたし、自信もついた試合になりました」

　試合後、感極まった様子もあったソン・ボムグン。その理由を問われると、離脱していた期間の苦労を明かした。

「自分は試合が終わってから泣くタイプではないのですが、試合終了の笛のあと、リハビリの日々が思い出されました。プロとして、試合に出場して、活躍するのが当たり前です。久しぶりに“当然のこと”ができて、自然と涙が出てきてしまいました」

　ソン・ボムグンが正守護神としてコンスタントに出場していた８月以前は、チームが低迷していた。そこから最終盤になるにつれて仲間たちが躍動し、結果を掴む姿をピッチの外から眺めていた韓国代表GKには、相当な悔しさがあったはずだ。名古屋戦は、その鬱憤を晴らす働きだったと言える。

　湘南は次節、J１残留を争うライバルの横浜FCとの直接対決を迎える。

「今日と同じく、必ず勝利を掴まなければいけません。監督やコーチの言葉を信じて戦えば、自然と良い結果がついてくると思います」（ソン・ボムグン）

　この重要な局面で復帰し、素晴らしいプレーを見せたソン・ボムグンが、現在４戦負けなしと好調のチームをさらに勢い付けるだろう。

取材・文●岩澤凪冴（サッカーダイジェスト編集部）

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