何度だって見たくなるロングフィード。称賛されるべき川崎CB山村和也の美技

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2023年10月21日

寸分の狂いもなくボールを小林のもとへ

逆転勝利に笑顔を見せる山村。小林の同点弾を演出した。(C)SOCCER DIGEST

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[J1第30節]川崎4-2福岡/10月20日/等々力陸上競技場

 1-2のビハインドから試合終盤の一気呵成の3ゴールで川崎が福岡に逆転勝利した一戦、何より印象に残ったのが、川崎が同点に追いついた84分の小林悠のゴールではないか。

 これまで出場機会が限られた36歳のストライカーの絶妙なトラップなど技術力と魂のこもった一発は感慨深かったが、そのアシストをマークしたCB山村和也の美しいロングフィードも称賛されるべきだろう。

「悠さんが入ってきて、『自分のことを見ておいて』と言っていて、目が合ったので出すことができました」(山村)

「その前のセットプレーでヤマが近くにいて、背後を狙って欲しいという話をしていて、本当にリクエスト通りの最高のボールが来た。だからトラップを完璧に止めることを意識し、あとは流し込むだけでした」(小林)

 ふたりの言葉からも狙い通りのゴールであったことが分かる。

 自陣のセンターサークル内、やや左でボールを持った山村は対角線上へ相手のペナルティエリアへ走り込んだ右ウイングの小林へロングフィードを送る。

 そのボールは相手DFの頭上を越え、ピタリと小林の足もとへ。正確にコントロールした小林は冷静にゴールへと流し込んだのである。

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 奇しくも、福岡戦に向けたトレーニングが行なわれた数日前、鬼木達監督は「ボールをしっかり蹴ることができる。だから遠くを見ることができる」と山村を評していた。

 指揮官は、CBの山村はボールを正確に蹴る技術があるからこそ、一番遠くの味方を常に見続けられ、だからこそ、相手DFを警戒させることができると話すのだ。

「見るだけで相手の守備を動かせると言いますか。もし遠くを見ることができなかったら、相手DFは警戒せずにラインを押し上げられます。でも狙えると意識づけさせることで、相手は中央を絞り、そうするとサイドチェンジも通りやすくなる」

 福岡戦のゴールは、まさに鬼木監督が語っていた山村の真骨頂が表われたシーンだろう。CBでも相手の守備ラインを攻撃し続けられる。より評価されるべき匠の技が、山村のプレーには詰まっていた。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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