2016年１月４日、レアル・マドリーがラファエル・ベニテス監督を解任。そして、同時にクラブのレジェンドであり、Bチームの監督を務めていたジネディーヌ・ジダンの新監督就任を発表した。
 
　今シーズンのR・マドリーは、リーガ12節（2015年11月22日）にホームでのクラシコで０-４と完敗を喫したうえ、さらに度々、チーム内の不和がメディアに晒されるなど歯車が噛み合っていない印象を残していた。
 
　そんななか、急遽クラブの期待を背負うことになった新監督のコメントから紹介しよう。
 
ジネディーヌ・ジダン（R・マドリー新監督／元フランス代表）
「今日は特別な日だ。少し感情的になっている。選手として契約した時以上に興奮するね。マドリーは世界最高のチームで、最高のファンがいる。だからこそタイトルを獲れるよう、ベストを尽くさなければならない。私はクラブのために全身全霊を捧げるつもりだ」
 
　現役時代にR・マドリーで５シーズンに渡って活躍し、チャンピオンズ・リーグなどビッグタイトルをクラブにもたらしたうえ、13-14シーズンにはカルロ・アンチェロッティ監督の参謀役としてアシスタントコーチを務め、選手とも良好な関係を築いていたジダン。「全身全霊を捧げる」というのは、長年良好な関係を築いてきたR・マドリーへの思いからくる本心なのだろう。
 
　記者会見に同席したフロレンティーノ・ペレス会長は、このフランス人指揮官を手放しで賞賛している。
 
フロレンティーノ・ペレス（R・マドリー会長）
「彼が世界で最も偉大なフットボーラーであることに疑いの余地がない。彼はこのクラブを率いる難しさやタフさを他の誰よりも理解している。彼の辞書に不可能という文字などないんだ」
 
　ペレス会長がそう太鼓判を押す一方で、トップリーグでの監督経験のないジダンの手腕を疑問視する声も上がっている。
 
グレイム・バラゲ（西紙『AS』記者）
「ジダンはモウリーニョやアンチェロッティとは違ったタイプのリーダーだ。アシスタントコーチ時代には、アンチェロッティと選手との架け橋になっていたが、マドリーBでは監督として上手く振る舞うことができない時もあった。つまり重要なのは、誰を右腕に指名するかだろう」
 
ローリー・スミス（英紙『The Times』記者）
「ペレスはクラブのレジェンドに指揮させることで、バルセロナにおけるグアルディオラのような三冠達成をジダンに期待しているようだけど、実際はニューカッスルを降格させたアラン・シアラーみたいになるんじゃないかな？　私はそう思うよ」
 
　いずれにしても、R・マドリーがシーズン途中で監督経験の少ないレジェンドにチームを任せるという大きな賭けに出たことは間違いない。
 
　成功した喜びは大きい半面、失敗に終わった場合の損失は計り知れない。仮に解任となれば、チームにとってもサポーターにとっても耐えがたい痛みとなるだろう。果たしてジダンは、相思相愛のクラブを窮地から救えるのか。それとも……。
 
文：内藤秀明　text by Hideaki Naito