指揮官との“衝突”を経て成長を遂げた左利きのドリブラー。
夏の王者として1回戦に挑んだ東福岡。選手権が持つ独特の緊張感や、守備に比重を置いた遠野の5バックが、選手たちに初戦の難しさを与えた。
しかし、前半12分にMF中村健人の左CKからDF小田逸稀が先制点を奪うと、後半4分には再び中村の左CKから相手のオウンゴールを誘発。直後の同10分には、MF三宅海斗が右足で試合の行方を決定付ける3点目を挙げ、危なげなく勝利を収めた。
夏冬連覇に向けて好発進をした『赤い彗星』。そのなかで、3点目を決めた左利きのドリブラーである三宅の存在感は、ひと際目立った。
「全然緊張していなくて、逆に不安でした(笑)。『え、これが選手権なのかな?』というくらいで、昨日の開会式でも全然緊張しなかった」という強心臓ぶりで、初の選手権にも顔色ひとつ変えずにプレー。自身がネットを揺らした直後には、2年生のMF髙江麗央に身ぶり手ぶりをまじえ、アドバイスを送る余裕すら見せた。
「自分のやりやすいようにプレーしているだけ」というアウトサイドでのトラップ。縦を切られれば中へ、中を切られれば縦へと抜けるドリブル。いずれも、その姿はオランダ代表のロッベン(バイエルン)を彷彿させる。
三宅のプレーぶりに遠野の長谷川仁監督は、「彼のところではかなりやられました。縦にも行くし、なかにも行く。そしてシュート力もある。彼を警戒していたのですが、後手を踏んでしまいました」と実力を讃えた。
一方、東福岡の森重潤也監督は「ゴールに向かう貪欲さに関しては良い」と、その強気なプレーに賞賛を送る。
ただ、その姿勢が裏目に出ることもしばしば。新チームが発足した直後に行われた3月のサニックス杯では、「何でこうしないのかと言われた時に、自分はこの選択が一番だと思った、と反論してしまった」(三宅)と大会直前に指揮官と衝突し、11番を剥奪されてしまう。
とはいえ、指揮官は三宅を見限ったわけではない。その大会で敢えて11番を背負う選手を置かず、22番を与えることで彼の奮起を待っていた。
「相当、悔しかったです。『この遠征でお前が変われないと11番は渡さない』と監督に言われました」(三宅)
ここから彼は期待に応えるべく、“ヒガシ”のサッカーを理解することに注力。山下芳輝(元アビスパ福岡他)と同期であるOBの平岡道浩コーチの助けも借りながら、自身のプレーを見つめ直した。
「後から考えれば、自分が悪かったと思う。ヒガシのサッカーのなかで、どのようにして自分の良さを出していくかが重要」という考えの下、チームのなかで個を活かす術を身に付けた。
「チームコンセプトのなかで、そこはもっと違うプレーをしてほしいというところもあった」と、指揮官が口にするように、改善すべき点はある。しかし、それは期待をしているからこそ。今大会を通じ、どこまで成長を遂げるのか非常に楽しみである。
取材・文:松尾祐希(フリーライター)
しかし、前半12分にMF中村健人の左CKからDF小田逸稀が先制点を奪うと、後半4分には再び中村の左CKから相手のオウンゴールを誘発。直後の同10分には、MF三宅海斗が右足で試合の行方を決定付ける3点目を挙げ、危なげなく勝利を収めた。
夏冬連覇に向けて好発進をした『赤い彗星』。そのなかで、3点目を決めた左利きのドリブラーである三宅の存在感は、ひと際目立った。
「全然緊張していなくて、逆に不安でした(笑)。『え、これが選手権なのかな?』というくらいで、昨日の開会式でも全然緊張しなかった」という強心臓ぶりで、初の選手権にも顔色ひとつ変えずにプレー。自身がネットを揺らした直後には、2年生のMF髙江麗央に身ぶり手ぶりをまじえ、アドバイスを送る余裕すら見せた。
「自分のやりやすいようにプレーしているだけ」というアウトサイドでのトラップ。縦を切られれば中へ、中を切られれば縦へと抜けるドリブル。いずれも、その姿はオランダ代表のロッベン(バイエルン)を彷彿させる。
三宅のプレーぶりに遠野の長谷川仁監督は、「彼のところではかなりやられました。縦にも行くし、なかにも行く。そしてシュート力もある。彼を警戒していたのですが、後手を踏んでしまいました」と実力を讃えた。
一方、東福岡の森重潤也監督は「ゴールに向かう貪欲さに関しては良い」と、その強気なプレーに賞賛を送る。
ただ、その姿勢が裏目に出ることもしばしば。新チームが発足した直後に行われた3月のサニックス杯では、「何でこうしないのかと言われた時に、自分はこの選択が一番だと思った、と反論してしまった」(三宅)と大会直前に指揮官と衝突し、11番を剥奪されてしまう。
とはいえ、指揮官は三宅を見限ったわけではない。その大会で敢えて11番を背負う選手を置かず、22番を与えることで彼の奮起を待っていた。
「相当、悔しかったです。『この遠征でお前が変われないと11番は渡さない』と監督に言われました」(三宅)
ここから彼は期待に応えるべく、“ヒガシ”のサッカーを理解することに注力。山下芳輝(元アビスパ福岡他)と同期であるOBの平岡道浩コーチの助けも借りながら、自身のプレーを見つめ直した。
「後から考えれば、自分が悪かったと思う。ヒガシのサッカーのなかで、どのようにして自分の良さを出していくかが重要」という考えの下、チームのなかで個を活かす術を身に付けた。
「チームコンセプトのなかで、そこはもっと違うプレーをしてほしいというところもあった」と、指揮官が口にするように、改善すべき点はある。しかし、それは期待をしているからこそ。今大会を通じ、どこまで成長を遂げるのか非常に楽しみである。
取材・文:松尾祐希(フリーライター)