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【高校サッカー】究極の好ゲーム! 選手権予選敗退の静岡学園がU-18プレミア参入戦で大津と演じた“技術の応酬”

カテゴリ:高校・ユース・その他

安藤隆人

2015年12月16日

「最後に観ている人が楽しい試合を高校サッカー同士で出来たことは、本当に誇らしい」

55分、静岡学園の旗手が巧みな切り返しから左足のシュートを決める。チームメイトが一斉に駆け寄って祝福した。写真:安藤隆人

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試合終了の瞬間、敗れた静岡学園の選手とともに大津の選手もピッチに倒れ込んだ。激闘を物語るシーンだ。写真:安藤隆人

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 タイムアップの瞬間、敗者となった静岡学園に大きな拍手が沸き起こった。
 
 お互いが持ち味を惜しげも無く発揮し合った、“究極の好ゲーム”は大津が延長後半アディショナルタイムに劇的な決勝弾を挙げて3-2で制し、来季のプレミアリーグ昇格を手にした。
 
 率直に言って静岡学園は強かった。今年のチームはまさに「絶対に一度は見ておきたいチーム」だった。FW加納澪、MF旗手怜央、薩川淳貴、ボランチの鹿沼直生、若山修平、GK山ノ井拓己と、1年時から主力として選手権を経験している選手や年代別代表歴のあるタレントを多数擁したチーム。とりわけ加納、旗手、薩川を軸にした攻撃力の破壊力は凄まじく、静学らしい個人技の高さと、スピード、そしてダブルボランチや最終ラインから繰り出される精度の高いミドルパス、ロングパスは、攻撃にダイナミズムを生み出していた。
 
 プリンスリーグ東海でその攻撃力は爆発。18試合でダントツの73得点を叩き出し、守備も僅か9失点と、攻守において盤石の戦いぶりを見せ、優勝を果たした。しかし、選手権予選では準決勝で清水桜が丘に0-1で敗れ、全国大会出場はならなかった。
 
 彼らに残されたのは、プレミアリーグ参入戦のみとなった。1回戦では東京Vユースを相手に、破壊力ある攻撃を見せて2-0と勝利し、昇格決定戦では大津を相手に、冒頭で記したような、“究極の好ゲーム”を展開した。
 
 その大津戦。静学は立ち上がりから1トップの加納とトップ下の旗手が、連動した攻めでバイタルエリアに侵入していく。10分に大津に先制を許すが、17分に旗手が強烈なミドルシュート。35分にも旗手のボールキープから、右SBの岡部歩夢がクロス。これを走り込んだ若山がシュートを放つ。ゴールには至らなかったが、いずれもリズミカルな展開からのシュートで、『静学らしさ』が出ていた。
 
 そして55分、左サイド深くでボールを受けた薩川が、DFを牽制しながらボールキープすると、その大外を左SBの荒井大がオーバーラップ。薩川からボールを受けると、マイナスの折り返し。ニアに飛び込んだ旗手がワントラップしてDFを食いつかせ、鋭い切り返しから左足を一閃。ボールはゴールに吸い込まれた。
 
 静学のテクニカルな攻撃に手を焼きながらも、静学と同様に質の高い多彩な攻撃を見せる大津は、63分に鮮やかな崩しから勝ち越しゴールを挙げる。高い技術の応酬となった試合は、66分に右クロスから加納が放ったシュートはバーを叩き、そのこぼれ球を旗手が拾ってシュートを放つも、大津の粘り強い守備にゴールライン手前でクリアされた。
 
 その後も旗手が左サイドで3人抜きを見せたり、若山もテクニカルなフェイントでふたり抜きをするなど、緑のユニホームがビッグプレーで躍動するたびに観客はどよめいた。76分に右CKをニアで鹿沼がヘッドで合わせ、同点ゴールを挙げると、スタジアムの盛り上がりは最高潮に達した。
 
 その後、静学はスピードとテクニック、アイデアを融合させた攻撃を繰り出す一方で、大津の質の高いカウンターを、GK山ノ井を中心に高い集中力を持って弾き返した。
 
 延長戦でもハイレベルな攻防が続いたが、冒頭で書いたようにラストプレーで静学は敗れ、今年のチームは最後の時を迎えた。試合後、涙を見せる選手達。川口修監督も目をまっ赤にしていたが、その表情は清々しくさえあった。
 
「これだけスタンドのお客さんが沸く試合ができて、本当に監督冥利に尽きます。大津さんは本当に強かった。レベルが高かったからこそ、ウチの力も引き出してもらえた。最後に観ている人が楽しい試合を、高校サッカー同士でできたことは、本当に誇らしいです」
 
 この試合をスタジアムで観ていた人間なら、その言葉に異を唱える者はいないだろう。もう一度言いたい。静学は強かった。そしてもう一言添えるなら、このチームを選手権でも観たかった――。

取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)
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