1989年、ラ・レアルは時代に合わせて「バスク人純血主義」を取りやめている。そこで歴史上初めて、スペイン人を含めた外国人選手を獲得したわけだが、白羽の矢を立てたのが、ロングボール戦法を得意としていたアイルランド代表FWで、ヘディングが得意なジョン・オルドリッジだった。

　ラ・レアルはサトゥルステギからオルドリッジ以後も、FW像は一貫している。ボスニア・ヘルツェゴビナ代表メホ・コドロ、アルバニア代表エドガラス・ヤンカウスカス、旧ユーゴスラビア代表ダルコ・コバチェビッチ、スペイン人イマノル・アギレチェ、ブラジル代表ウィリアン・ジョゼ、スウェーデン代表アレクサンデル・イサクは大きな分類では同じところに入る。クロスに合わせるプレーを得意とし、大柄でセンターバックとの消耗戦に強い。だんだん大型化し、今や身長は190センチ前後だ。

「ゴール前で競り負けるようなセンターフォワードは要らない」

　ラ・レアルを見つめる人間が、今も守る暗黙の掟である。その法則にしたがい、クラブの戦いは成立しているのだ。セルロトは小柄な久保とのコンビが絶賛されているが、実はこのツートップも一つの形と言える。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき／1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL　TEATRO　ラ・リーガ劇場』（いずれも東邦出版）など多数の書籍を出版。2018年３月に『ラストシュート　絆を忘れない』（角川文庫）で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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