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初陣で見えた川崎の新スタイル。右SB山根視来の“ボランチ化”に始まる変化は何をもたらすのか

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2023年02月18日

やりたいことは表現できたが…

右SBながら柔軟な動きを見せた山根。今季のキーマンになりそうだ。(C)SOCCER DIGEST

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[J1第1節]川崎1-2横浜/2月17日/等々力陸上競技場

「攻め続けたい。魅せるサッカーにより取り組んでいきたい」

 チーム始動日、あと一歩届かずリーグ3連覇の夢が叶わなかった2022年を経て、覇権奪回へ選手たちには「最強のチャレンジャー」になろうと呼びかけた鬼木達監督は、今季のポイントを力強く宣言した。

 こうも付け加えた。

「システムにこだわらずに自分たちのサッカーをやりたい。世界のトレンドに捉われすぎずに、フロンターレにできるものを目指したいんです。サッカー仲間からフロンターレって面白いなと言ってもらえるようになりたい。でも魅せるというのは、華麗ではなく、本当の意味でサッカーで魅せるためには努力しかないと思っています」

 オフにはキャプテンで不動のCBだった谷口彰悟がカタールへ新天地を求めた。ここ数年、タレントの海外挑戦が続いている。その状況で川崎はどんな新しいサッカーを作り出すのか。注目された横浜との開幕戦では2023年版のスタイルを見せたと言えるだろう。

 何よりの変化は右SB山根視来の起用法だ。システムは従来の4-3-3。山根もこれまで同様にSBとして幅を取りつつ、右ウイングの家長昭博とともに右サイドを崩しにかかった。

 ただ時間を経るごとに背番号13は状況を見ながら中へ移動し、中盤の底でパスを展開する仕事を担うようになる。形にするなら最終ラインは山根が抜けた分、3枚になり、中盤は底に山根が入ると、従来の3人が押し上げられるように前へ。中盤がひし形のような3-4-3、もしくは3-2-5とも表現できるようなシステムへと可変させたのだ。

 この新戦術はボール回しをスムーズにし、ポゼッション力を高めるにはまずまずの効果を発揮した。

 現にインサイドハーフの脇坂泰斗は「ミキくん(山根)が中に入っていくことで、自分たちがより前でボールを受けられる」と話し、後半の途中から出場した大島僚太も「一番は前に上手く進められるところ」と口にする。何より選手たちが結果は出ずも「やろうとしてきたはできた」と口々に語っていたのが印象的だった。

 もっとも果敢に回す意識が、GKチョン・ソンリョンのパスミスにつながり、開始早々に失点したチームは、ポゼッションはできるものの、なかなか効果的にゴールへつなげられない。38分にはセットプレーからも点を失い、苦しい状況に追い込まれた。

 脇坂は振り返る。

「後半に押し込む時間が多く、やってきたことが出せたゲームだったとは思います。でも90分を通して相手は2点取って、こちらは1点しか取れていない。そこは質のところ。チャンスは多く作れていたので、最後の質が課題かなと。改めてそこが大事だなと感じたゲームでした。特に前半は相手を見すぎて慎重になっていた部分がある。後半はやることを割り切るというか、見えていたらボールをつけて動くプレーが多かった。それを前半からできるようにしないといけないです」
 
 新たな挑戦はまだ始まったばかり。1試合だけで評価を下すのは時期尚早だろう。加えて鬼木監督は繰り返している。「目的と手段を履き違えてはいけない」と。

 何よりボールを握り、相手を押し込むのはゴールを奪える確率を上げるためで、その目的を失ってはいけないということだろう。相手を押し込んだ際にどこでパワーを使うのか、後ろからのビルドアップでどれだけ勝負球を増やすのか、チームとして高めていくべき部分だと見られる。

 一方で開幕戦では谷口から5番を受け継いだ大卒2年目の佐々木旭が左SBとして充実のプレーを見せ、新キャプテンに指名された大卒3年目の24歳、橘田健人が抜群の出来で中盤を仕切った。このふたりの連係から一矢報いるゴールを奪うなど収穫もあった。

 振り返れば同じく3連覇を逃して臨んだ2020年は4-3-3という新システムを導入し、多くのタレントを生かして今ままで以上の上昇気流に乗った。当時と似ている感覚はあるのか。鬼木監督は開幕戦の数日前にこう語ってくれていた。

「あの時のほうが大きくシフトチェンジした感覚はあります。今は21年でしっかりベースを作り、22年で結果は出せませんでしたが、すべてを否定するわけではなく、そこからの積み上げを考えている。だから今年はブラッシュアップのイメージですね。ただそこで色んな形や、人を育てるというところは今季の自分たちのテーマでもありますし、クラブからもそういうところは非常に言われています。勝ちながらチームも人も成長させていく。そこをより強く出していきたいです。

 その意味で今季はピッチで年齢差を感じさせないようにアプローチをしていますし、選手たちのなかでも当たり前ですが、全員が先輩後輩ではなくてやり続けられる環境を作りながら非常に精力的にやってくれています。心から楽しそうにやっている選手もいる。そういう選手は躍動していて面白いですよね。このままやり続けられれば面白いと思います。

 当然、これからメンバーが決まっていきますが、いつでも出られる準備をしていてほしいとも伝えています。紅白戦に出るとかの小さい目標ではなく、もっと大きな目標を持てるチームだと思っています」

 川崎の新たな取り組みがどんな成果を生み出すのか、今はちょっぴりの不安と大きな期待を胸に注目したい。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

【PHOTO】川崎の出場16選手&監督の採点・寸評。敗れはしたが新キャプテンの橘田は抜群のプレー

【PHOTO】等々力競技場にかけつけた川崎フロンターレサポーターを特集!
 
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