軽く蹴ったように見えて、重く速い球を飛ばせた
カタールW杯、日本代表が勝利を手にするには、得点をしなければならない。それは、サッカーというスポーツでは言うまでもないことだろう。しかし、それが一番の難儀である。
誰もがゴールできる。サイドやトップ下やインサイドハーフ、あるいはボランチ、サイドバック、センターバック、そしてゴールキーパーも含めてゴールの可能性はある。しかし使命としてゴールを託されているのは、フォワードだろう。ゴールゲッター、点取り屋、ストライカーという異名は、ゴールをミッションとしていることを意味する。
では、ゴールの技術とはいかなるものか。
「シュートはゴールへのパス」
そうした言い回しは昔からあって、一つの真理だろう。決めようと思うと、どうしても力が入り、むしろインパクトが伝わらなかったり、ズレてしまったりする。それを避けるためにも、平常心でパスのように蹴るほうがベターと言える。とは言っても、甘いボールはGKの手に収まってしまうはずで…。
「(刀で)試し切りをするときも、また真剣で切り合う場合にも、人を切るということでは手の持ち方に変わりはない」
誰もがゴールできる。サイドやトップ下やインサイドハーフ、あるいはボランチ、サイドバック、センターバック、そしてゴールキーパーも含めてゴールの可能性はある。しかし使命としてゴールを託されているのは、フォワードだろう。ゴールゲッター、点取り屋、ストライカーという異名は、ゴールをミッションとしていることを意味する。
では、ゴールの技術とはいかなるものか。
「シュートはゴールへのパス」
そうした言い回しは昔からあって、一つの真理だろう。決めようと思うと、どうしても力が入り、むしろインパクトが伝わらなかったり、ズレてしまったりする。それを避けるためにも、平常心でパスのように蹴るほうがベターと言える。とは言っても、甘いボールはGKの手に収まってしまうはずで…。
「(刀で)試し切りをするときも、また真剣で切り合う場合にも、人を切るということでは手の持ち方に変わりはない」
剣豪、宮本武蔵は「五輪の書」の中で、その極意を示している。それはシュートという相手を仕留める動きにも通じるものがある。
「敵を切るとき、手の具合は変わることなく、手が委縮して動きの取れないことがないように(刀を)持つべきである。もし敵の太刀を打ったり、受けたり、当たったり、抑えたりすることがあっても、親指と人差し指の調子を少し変えるくらいの気持ちで、とにかく相手を切るのだという気持ちで太刀を取らねばならぬ。太刀の動きにせよ、手の持ち方にせよ、動けなくなってはいけない。固着は死の手で、固着しないことが生の手である。これを十分に心得る必要がある」
世界最高のFWでバロンドールを受賞したカリム・ベンゼマは、たしかにパワーもあるが、力みは感じられない。流れるような体の動きで、自然体で足を振る。足腰の強さ、ビジョンの鋭敏さもあるだろうが、どっしりと構えているからこそ、キックをキャンセルし、次のプレーに移行できるし、いざとなると速い足の振りでボールに最大限のインパクトを与え、ネットを揺らせる。
日本人では、Jリーグ史上最多得点の大久保嘉人が、その領域に達していた。足の小指のわずかな使い方でも回転を変えられたし、ゴールを量産した時代は軽く蹴ったように見えて、重く速い球を飛ばせた。力が抜けているから、相手の対応次第で、変幻だった。
カタールW杯、日本代表で期待したいのは、上田綺世になるだろう。もし彼がその域に入ることができたら――。日本の勝利に直結するはずだ。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
【PHOTO】カタールW杯のスタンドを華麗に彩る“美しきサポーターたち”を厳選!
「敵を切るとき、手の具合は変わることなく、手が委縮して動きの取れないことがないように(刀を)持つべきである。もし敵の太刀を打ったり、受けたり、当たったり、抑えたりすることがあっても、親指と人差し指の調子を少し変えるくらいの気持ちで、とにかく相手を切るのだという気持ちで太刀を取らねばならぬ。太刀の動きにせよ、手の持ち方にせよ、動けなくなってはいけない。固着は死の手で、固着しないことが生の手である。これを十分に心得る必要がある」
世界最高のFWでバロンドールを受賞したカリム・ベンゼマは、たしかにパワーもあるが、力みは感じられない。流れるような体の動きで、自然体で足を振る。足腰の強さ、ビジョンの鋭敏さもあるだろうが、どっしりと構えているからこそ、キックをキャンセルし、次のプレーに移行できるし、いざとなると速い足の振りでボールに最大限のインパクトを与え、ネットを揺らせる。
日本人では、Jリーグ史上最多得点の大久保嘉人が、その領域に達していた。足の小指のわずかな使い方でも回転を変えられたし、ゴールを量産した時代は軽く蹴ったように見えて、重く速い球を飛ばせた。力が抜けているから、相手の対応次第で、変幻だった。
カタールW杯、日本代表で期待したいのは、上田綺世になるだろう。もし彼がその域に入ることができたら――。日本の勝利に直結するはずだ。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
【PHOTO】カタールW杯のスタンドを華麗に彩る“美しきサポーターたち”を厳選!