［E-１選手権］日本 ６-０ 香港／７月19日／茨城県立カシマサッカースタジアム

　平日のナイターゲーム。それでも代表戦である。夕方に開催されたなでしこジャパンとのダブルヘッダーでもあった。だからこそ淡い期待も抱いたが、最終的にカシマサッカースタジアムに集った観客数は4980人。

　寂しいスタンドを背に、Ｊリーガーのみで参加しているE-１選手権が７月19日、開幕した。日本の初戦の相手は香港。実力差がある相手に対し、森保ジャパンは序盤から優位に試合を進め６-０で勝利を収めた。

　準備期間が短いなかで森保一監督は「トップ下の西村拓真＋ダブルボランチの岩田智輝、藤田譲瑠チマ」といったJ1で首位を走る横浜の“セット”を活用しながらチームを構築。彼らの連係を生かしつつ、CF町野修斗、左サイドの相馬勇紀の特長を上手く組み込んで前半だけで４ゴールを奪うなど、勝利につなげた。

　ピッチでは各選手の“顔”もよく表われていた。

　横浜での起用法同様にトップ下で機動力を生かした西村は相手のギャップを突いてボールを引き出し、前線との橋渡し役として機能。強烈なショットとともに２ゴールを奪ってみせた。

　勢いに乗る町野は巧みなヘッドで先制点を奪うと、後半にもこぼれ球に反応して２ゴール目をゲット。フィニッシュのレパートリーの豊富さと嗅覚を披露した。

　そして西村、町野とともに２ゴールを奪った相馬は開始早々に華麗なFK弾でチームを勢いに乗せ、後半には右からのクロスをヒールで合わせる。左サイドからの仕掛けは彼ならではでもあった。

　２アシストをマークした山根視来も持ち味を存分に発揮。得意のハーフスペースでワンタッチパスなどで攻撃にリズムを加えながら、高精度のハイクロスと、鋭いグラウンダークロスで町野と相馬のゴールをお膳立てした。川崎の攻撃を支える右サイドのキーマンとして良い働きを提供したと言えるだろう。

　そして個人的にはパリ五輪出場を目指すＵ-21代表にも名を連ねるボランチの藤田のダイナミックな動きにも心を惹かれた。若きタレントは絶好のアピールの場と言わんばかりに激しく寄せてボールを奪えば前へ。攻守に絡める人材として指揮官の頭のなかに名を刻んだはずだ。

　もっとも前述したように香港戦は相手とのパワーバランスもあって、選手たちのパフォーマンスがよく見えた部分もある。E-１選手権はまだ初戦を終えたばかりで、中国、韓国とのゲームの結果次第ではマイナスのイメージがつく可能性もある。期待値はやはり空席が目立ったスタンドが如実に示しているだろう。

　それでも、最年長の水沼宏太が誰よりも声を張り上げ、チームに檄を飛ばし、今代表でキャプテンに任命された谷口彰悟もチームを引き締めようと叱咤激励する。日本のエンブレムを身に付けたプライドを示そうとする彼らの姿にはグッとくるものがあり、各選手のアピールには胸がスカッとするものがあった。

　願わくば彼らの意地、国内の“火”を森保監督には消さずに代表の強化、人気につなげてもらいたい。

　今年11月のカタール・ワールドカップに向けた強化の場は９月の欧州遠征と直前合宿しかない。メンバーはほぼ固まっていると言えるだろう。それでも今回のE-１選手権を戦った価値を示してもらいたい。選手たちのアピールぶりを受けてカシマの夜空にそう感じた。

取材・文●本田健介（サッカーダイジェスト編集部）　

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