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縦パスが通らない、前を向けない。惨敗のチュニジア戦で浮き彫りになった展開力の欠如【編集長コラム】

カテゴリ:日本代表

本田健介(サッカーダイジェスト)

2022年06月15日

ワールドカップまで時間が足りないだけに

チュニジアに狙われたアンカーの遠藤。プレスをかけられた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

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[キリンカップ]日本 0-3 チュニジア/6月14日/パナソニックスタジアム吹田

 ミドルプレスから奪ってのショートカウンター、伊東純也のスピードを生かしたサイド攻撃。この2つが森保ジャパン最大の武器であり、真骨頂である。

 もっともグループリーグでスペイン、ドイツと同組になったワールドカップでは、守備の時間が増えることを理解しつつ、ベタ引きで守るだけでは厳しいことも分かっている。

 そこで、4つの強化試合が組まれた“6月シリーズ”でより意識されたのが、自分たちでボールを握る時間、ゲームをコントロールする時間が増やすことだった。

 現に6月6日のブラジル戦では格上を相手に、後方からの丁寧なビルドアップを狙い、なかなか奏功しなかったとはいえ、これまで以上につなぐ意識を示した。

 そして迎えた4連戦の“最終戦”となった大阪でのチュニジア戦。ワールドカップをシミュレーションしながら中3日で戦ってきた4試合目だ。選手たちに疲労もあっただろう。ただ、それを差し引いても、相手に戦い方を研究されたなかで、厳しい戦いを強いられ、森保ジャパンのいくつもの課題が浮き彫りになった。
 
 まずボールを後方からつなぐ場面。SBからの縦パスでウイングを走らせる、もしくはウイングに入れて、インサイドハーフが縦へのインナーラップを仕掛ける。森保ジャパンとして得意のサイド攻撃は何度も作り、チャンスを生み出した。しかし、中央からの攻撃となると途端に回数が減る。

 何より相手も警戒しており、アンカーの遠藤航が執拗なマークにあったとはいえ、中央エリアの縦パスの数自体が少なく、中盤や前線の選手が前を向く回数も相当に限られた。CBからパスを入れても後ろ向きに受けた味方が、再びCBに戻すシーンばかりで、結局はサイドに展開する。

 後半頭から田中碧を投入し、全体の意識も高まったのか、ラインをより押し上げ、相手陣内でポゼッションする回数が増えたが、すると今度は最終ラインの裏を狙われてCB吉田麻也がPKを献上。

 2失点目も裏へのボールをCBふたりとGKの呼吸が合わず、吉田がボールの処理を誤って、相手にゴールを許してしまった。

 本来であれば、現代サッカーの主流のようにラインを高く設定して相手を押し込み、共通意識を持ちながらボールを展開し、失えば即時奪回を目指す、Jリーグで言えば王者・川崎のようなスタイルが理想となるのだろう。

 もっともCBの人選、そして怪我で途中離脱した守田英正が戻り、田中碧と組めば状況は変わるかもしれないが、現状での中盤の構成力、選手が悩みながらプレーしているような姿を鑑みれば、より現実的な戦い方にシフトするべきなのかもしれない。

 ワールドカップへの準備は、9月の強化試合を戦うと、あとは短期間の直前合宿のみとなる。まさに時間は限られている。

 ポゼッション力の向上をそれでも目指すのであれば、人選で解決する手もあるが、ここまで固めたチームを崩すとも考えにくい。それならば単調にはなってしまうが、武器のサイド攻撃とショートカウンターを磨き上げる。それが現実的な選択に感じる。

 三笘薫は試合後、「チームとしてもボールを持った時に、ニアゾーンなどを取りにいくことを共有するのか、そういうバリエーションも少ないと感じます。チームとしての組み立てをやっていかないと、カウンターを受けるなど毎試合こういう流れになってしまう。どうやって攻めていくか、決まり事ではないですが、色んなものを持たないといけないと思います。個人でのコミュニケーションで、立ち位置を『こういう風にしてほしい』と言っていますが、そこはいろんな人たちで議論して共有する必要があると思います」と危機感を強めた。

 つなぐ意識を持ち、主体的に戦おうとする姿には好感を持てるが、初戦で敗れた最終予選を強行日程で戦ったこともあり、それを構築してこなかったツケを払わされている印象もある。攻撃のアプローチは良い意味で選手の個性ありき、悪い意味で出たとこ勝負な部分が多く、形を作るには何より時間がない。まずは自分たちにできることを整理し直し、どう見られようとも、シンプルに考える必要があるのではないか。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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