［キリンチャレンジカップ］日本 ０－１ ブラジル／６月６日／国立競技場

　一瞬、海外に来たのかと錯覚しかけた。

　試合前、アップを始めるべく選手がピッチに入ってくる時も、両チームのスタメン発表の時も、どちらかと言えば日本よりブラジル代表への盛り上がりのほうが大きかったような気がする。ゲームに入ればカナリア色のユニホームを着た選手たちが織り成すスピーディなアタックと、股抜きなど創造性溢れるプレーの連続に、何度も歓声が上がっていた。雰囲気から察するに、国立競技場を埋め尽くした６万3638人のほとんどが、ブラジル代表を見に来たのではないだろうか。

　ネイマールを筆頭にタレント力では雲泥の差があるので、ブラジルを見たいのは当然だから批判しているわけではない。ただ、単純な「有名人を見たいから」という理由以上の“人気の秘訣”は彼らのプレーから理解できた。

　ブラジルは仕掛けの意識が全然違った。スタメン11人全員がゴールへの意識が抜群に高い。ビルドアップ時のポジショニングの時点からネイマール、ルーカス・パケタ、ヴィニシウス・ジュニオール、ラフィーニャの攻撃陣は相手最終ラインギリギリの位置に並び、ゴールに最短距離で辿り着けるようにパスをつないでいく。日本のDFに囲まれてもドリブル突破を図り、狭いスペースはヒールキックや股抜きを駆使して打開。華麗なプレーの連続は最高に面白かった。
 

　一方、対峙した日本の組織的なディフェンスも素晴らしかった。４バックと５枚のＭＦを並べて統制された守備ブロックを築き、連動したプレスで最終ラインに穴を開けない。最後はCBの吉田麻也や板倉滉が身体を張り、GK権田修一は好セーブを連発。ブラジルの猛攻を受けながらもPKの１失点に抑えた。

　こんなに守備の完成度が高いチームを作り上げたのに、ブラジル戦以外の観客数を見れば森保ジャパンの人気低迷は窺える。例えばパラグアイ戦では、約４万2000人のキャパシティを誇る札幌ドームに訪れたのは２万4511人。立地的な影響もある数字かもしれないが、それだけではないのではないだろうか。

　ブラジルという格上との試合では守勢に回り、なかなか攻められないのは当たり前の展開だ。ただ、ワールドカップのアジア予選を思い返せば森保ジャパンは、個々が果敢に仕掛けるよりも、組織的に手堅く戦っていた。つまり力関係の影響だけではないはずだ。

　サッカーがエンターテイメントスポーツである以上、ブラジル戦以外で観客数が少ないのは由々しき事態とはいえ、作り上げてきたチームの方向性を変えるのは難しいだろう。ここまで来ると人気を回復させる方法は、ワールドカップでドイツやスペインに勝つくらいしか思いつかないが、ブラジル戦を見て森保ジャパンの青写真を描けた人はどれだけいただろうか。今の戦い方なら本番でも“惜敗”では後世に残るものはかなり少ないと思うので、日本サッカーにとってカタール・ワールドカップは「背水の陣」とも言えるかもしれない。

取材・文●志水麗鑑（サッカーダイジェスト編集部）

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