8番というポジションの重要性を新たに定義した
ラ・リーガ第17節のアトレティコ・マドリーとのマドリード・ダービー(マドリーが2-0で勝利)で見せたパフォーマンスは、そんな彼のプロフェッショナルな姿勢、卓越したフットボールIQに裏打ちされた判断力、熱量いっぱいの守備、創造的な閃きといった魅力が詰まっていた。
モドチッチがマドリーに加入したのは2012年夏。来夏に丸10年を迎えるが、シーズンを重ねるにつれその存在感は大きくなっている。
かつてのモドリッチは、勇敢な王子様のような風貌をしていた。その意味では、骨ばった顔つき、体についた無数の傷、数々の修羅場を経験した者だけが持つ不屈の闘志からは年月の経過を感じさせる。しかしその一方で模範的なリーダーシップ、プレーのバリエーション、どんなに難しい局面でも最適解を選び出す能力、チームメイトやファンと円滑にコミュニケーションする共感力などは若い頃のままだ。
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スター選手がやたら持ち上げられる昨今のフットボール界にあって、モドリッチは異端の存在だ。いや、天からの贈り物と言っていい。創造者にして労働者、熱さ、ソリッドさ、大胆さを併せ持ち、常に正々堂々と戦う。エゴをしっかりコントロールし、チームファーストの精神を体現し続ける。ファンが思い描く理想のプレーヤー像がモドリッチのプレーの中に凝縮されている。
シャビがバルサのフットボールにおける認識を変えた選手であれば、8番というポジションの重要性を新たに定義したのがモドリッチだ。かつて8番はピッチ上で上下動を繰り返すチームの縁の下の力持ち的な存在だった。決してメディア受けがいいとは言えなかった。
しかし、モドリッチはその8番が従来持っていなければならない豊富な運動量に、10番の感性の鋭さと前線へのパスの供給力、センターMFの的確な状況判断、DFの身体を張った守備を加味した。もちろんディナモ・ザグレブからトッテナムに移籍した頃から武器にしていた華麗なテクニックは今も健在だ。
しかも特筆に値するのは、全盛期のプレーを披露しながら、年齢を重ねるごとにいまだにレパートリーの幅を広げている点だ。フットボーラーにとって36歳という年齢は通常であれば下り坂に差し掛かる時期だ。
マドリーのようなトップレベルのチームではなおさらで、おまけにモドリッチは中盤というタフさが要求されるポジションを主戦場としている。しかし不思議なことに衰えを見せるどころか、年々パフォーマンスを高めている。
モドリッチはアトレティコ戦で攻守にわたって活躍を見せ勝利の立役者になった。しかし誰もその夜が最後の檜舞台になるとは考えてはいない。奇跡の36歳は遥か遠い地平線を見続けている
文●サンティアゴ・セグロラ
翻訳●下村正幸
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