昨季、高校サッカーの名門・市立船橋で１年生ながらレギュラーポジションを掴んだ逸材がいる。日本人とアメリカ人のハーフの父を持つ畠大雅（新２年）だ。
 
　期待の新鋭の武器は、スピードを生かした仕掛けと何度も突破を試みる強気な姿勢。また、先日行なわれた校内のマラソン大会で優勝するなど、持久力の高さも魅力のひとつでチームを率いる朝岡隆蔵監督が「本当に運動能力が高い」と舌を巻くほどである。
                     
　類まれなの才能を持ちながらも、中学までは無名の存在。全国レベルでの活躍も昨年のインターハイのみで、世代別代表に名を連ねたこともなかった。そんなダイヤの原石がついに日の丸を背負う機会を掴み、2月24日から行なわれるU-17日本代表のUAE遠征のメンバーに選出されたのだ。
 
　それに先駆け、畠は出発前日の23日に市立船橋の一員としてU-16日本代表との練習試合に出場。出番は後半からとなったが、１－２で敗れた一戦で自慢の豪脚を生かした突破で存在感を見せた。
 
　そのなかで昨季からの成長を感じさせたのが左サイドでのプレーだ。昨年まで右サイドバックやウイングバックで起用されていた畠は、新チーム発足後に逆サイドへコンバート。最初は慣れないポジションに戸惑いもあったが、ドリブルの際に左足でボールを持つ癖が生きてカットインを習得。シュートを放つまでにはなかなか至っていないが、横の動きが入ったことで相手が中を警戒し、得意の縦突破はより一層迫力を増した。
 
　１年の間に驚くべきスピードで成長を遂げてきた畠に初の代表選出について尋ねると、「びっくりしました。代表に選ばれるとしたら、最初はU-16のほうだと思っていた」という答えが返ってきた。今回はひとつ上の代表に呼ばれた畠だが、実は早生まれのためU-16代表の資格も有しているのだ。
 
　この試合を視察に訪れたU-17代表の秋葉忠宏コーチは代表招集の意図をこう説明する。

「森山さんがU-16に呼ばなかったから、U-17で呼んだ経緯があるんです」
 
　本来であれば来年にU-17ワールドカップがあるため、森山佳郎監督率いるU-16代表が優先されるのだが、今合宿は選出に至らなかった。そこで今回はU-17代表に招集。「馬力があるところを買っている。いろんな刺激を受けて欲しいし、世界にはもっといろんな選手がいることを知ってほしい」と秋葉コーチが話したように、実力を買われたのと同時に日の丸を背負うことでさらなる成長を促す狙いもあったのだ。

　下級生ながらチームの主力として存在感を示す畠大雅が持つポテンシャルはまさに無限大。サイドプレーヤーとなってから１年足らずで代表まで駆け上がった逸材は、初の日の丸を背負ってどのようなプレーを見せるのか。代表での経験を成長に結び付けられれば、今季の高校サッカー界のメインキャストに躍り出る可能性も十分にあり、再来年のプロ入りも視野に入って来る。

取材・文●松尾祐希（サッカーダイジェストWeb編集部）